アメリカは航行の自由作戦を実行してきましたが、
南シナ海での領土紛争に直接関与することはありませんでした。
ところが今週になってポンペオ国務長官が、
「中国の主張は無効」と強烈な声明を出し、
実質的にASEAN側に味方することを宣言しました。
中国は激しく反応し、対立は激化する一方です。
7月初旬には米中がそれぞれ、南シナ海で軍事演習を行うなど、
軍事衝突の恐れも出てきました。
そんな中、少し異なる視点からの分析が出てきました。
南シナ海をめぐる中国と周辺国との領有問題は、
太平洋戦争直後の中華民国の時代に始まっているそうなので、
それなりの歴史があります。
中国が領有を主張する領域は、
九段線と呼ばれる中国が勝手に引いた境界線の内側です。
地図を見るだけでも、中国の主張は無理がありますが、
2016年には国連国際仲裁裁判所で、
国連海洋法条約違反との裁決が出されました。
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フィリピン勝訴の採決でしたが、
中国の援助欲しさに親中政策をとりましたので、
採決はあってないようなものでした。
軍艦を南シナ海を航行させる作戦を始めましたが、
中国に対する圧力はなかったようです。
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今年になって中国は南シナ海に行政区を設定するという暴挙に出ました。
明確な南シナ海領有宣言です。
この頃から世界中の中国を見る目が厳しくなり、
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そしてポンペオ国務長官による声明が出されました。
7月13日の「中国の南シナ海での主張は完全に違法」
7月15日の「主権主張が中国に侵害されている国を支持する」
アメリカは武力衝突も念頭に置いていると考えるのが普通です。
折しも中国は周辺国との国境紛争を激化させており、
文字通り、周囲は敵だらけの状態になっています。
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世界中が戦争勃発かと固唾を飲んでいる時に、
シンガポールからは全く異なる見解が出ました。
徳国之声という中国語メディアが伝える記事を見つけました。
分析では、
「アメリカは周辺諸国を動かすために小さな動きを繰り返すだけ」
「北京政府に外交的・政治的圧力をかける手段に過ぎない」
「大統領選を有利に戦うためのポーズ。」
「アメリカ人は南シナ海がどこにあるのか知らないので、大統領選にはTikTokやファウェイ禁止の方が有効」
武力衝突はないとの分析です。
皆さんはどう思いますか?
記事はブログの最後に意訳版を添付しておきます。
武力衝突がないのに越したことはないですが、
中国の戦狼外交は周辺国との軋轢を生み出しています。
南シナ海、インド、台湾、日本と摩擦を起こし、
最近ではブータンにまで食指を伸ばしています。
8月13日からはファーウェイなど中国製品・サービスを使った製品の
米政府への納入を禁止するなど、
サプライチェーンからの中国外しが始ま利ます。
中国も対抗制裁を発表し、反米感情が高まっています。
このような状況では、ガルワン渓谷での中印衝突のような、
局地的な衝突が、大きな紛争に発展するかもしれません。
中台関係も緊張を増しており、
アメリカの動きが中国への挑発にしか見えませんので、
武力衝突が勃発するか否かは、
中国の忍耐力にかかっていると言えます。
長江の洪水が治った頃が山場かなぁ。早くて8、9月頃ですが。
以下が徳国之声の記事の意訳です。
+++徳国之声+++
[原題]<徳国之声 >华盛顿对南海硬起来 分析:美国只赢不输
アメリカは南シナ海の問題にはずっと慎重な態度を示してきた。国務長官ポンペオは最近初めて中国の九段線の主張を否定する強便な声明を発表した。中国と米国の綱引きが白熱し、米国の選挙戦が激化する中で、南シナ海は米国にとって良いカードであると指摘されている。
【徳国之声】
南シナ海の領土問題は引き続き激化しており、アメリカは月曜日(7月13日)に、中国の南シナ海での主張は「完全に違法」であると述べ、水曜日(7月15日)には、南シナ海の主権主張が中国に侵害されている国を支持すると再び表明した。
米国国務長官マイク・ポンペオは記者会見で、アメリカはASEAN(東南アジア諸国連合)と同じ立場に立ち、法的手段を通じて支援することを改めて表明した。ただし、アメリカは軍事手段ではなく外交手段で支援するだろうと述べた。
アメリカの声明は南シナ海問題についての、ハーグ国連国際仲裁裁判所裁定4周年に発表され、アメリカは初めて南シナ海の領土紛争における立場を公に表明した。中国外交部華春瑩報道官は、中国は自身の主権、安全保障、合法的な権益を断固として保護し続けると強く対応した。「樹木は静かで風は止まらない、もしアメリカが騒ぎを起こしたいのなら、暴風をもっと激しくさせてくれ」
分析:南シナ海問題は安価な政治の道具
シンガポールの南洋理工大学ラジャラトナム国際研究院副教授李明江は、アメリカは南シナ海問題ではどちらにもつかず、ただ航行の自由の支持を表明してきたが、現在は態度を明確にし重大な政策変更をしたと述べた。
李明江は、米中関係は緊張しているが、アメリカはあらゆる機会を利用して中国に圧力をかけ、南シナ海紛争をめぐる「誇大広告」は北京に外交的・政治的圧力をかける手段となっている。「国際法による中国の南シナ海における主張を非難することは法的根拠はなく、中国のイメージを損なうためにしている。さらに重要なことは、アメリカにとって南シナ海問題はとても安い政治の道具であり、勝つだけで費用がかからない」と述べた。
李明江は、アメリカがパトロールの強化を含め、「小さな動き」を増やし、日本やイギリスなどのその他の国に対して、南シナ海の航行の自由作戦を実行するよう説いて回るかもしれないと予想している。米中は銃に点火し、大規模な衝突を起こすのでしょうか?李明江は、アメリカは南シナ海に主権はなく、紛争当事国でもないため、直接介入する理由がないので、武力衝突の可能性は小さいと考えている。「米中は南シナ海で軍事的綱引きを行い、アメリカが結論を出すのは容易ではなく、損失よりむしろ利益を得るであろう。」と述べた。
アメリカシンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア海洋透明性イニシアチブ(AMTI)主任のグレゴリー・ポーリンは数日前にCNNに対して、過去にはアメリカはこの問題に沈黙を保ってきたが、最近の厳正な声明は外交上の「重い一撃」である。「ベトナムやフィリピンなどのパートナー国を支援し、ヨーロッパなどの国には、躊躇せずに何かを言うべきだ、という圧力をかけている。」
AP通信社は、トランプの新型コロナ感染症への対策不足が批判されたため、大統領選再選のために、11月の大統領選前に、対中国政策で民主党のバイデンよりも強便な政策を示めさなくてはならないと指摘した。李明江は、トランプは選挙のために「中国カード」を打っていると同意したが、しかし率直に言って南シナ海問題は、選挙戦の主な目的ではないかもしれない。「大部分のアメリカ人は南シナ海がどこにあるのか知らない、TikTokやファーウェイの禁止はもっと直接的だ」と語った。
ハーグ国際仲裁裁判所は2016年に、中国の南シナ海での行為は、国際法に違反していると裁定したが、アメリカはずっと態度を明確にしなかった。ポンペオが月曜日(7月13日)に声明を発表してようやく、長年にわたって南シナ海の近海資源を「脅しによってコントロールし」、強権によって国際法に取って代わり、南シナ海に海洋帝国を建立したとして中国を非難し、中国の主張する九段線を受け入れないと繰り返した。
<徳国之声 >华盛顿对南海硬起来 分析:美国只赢不输
http?://bit.ly/396h9kO
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