まだ安倍政権だった今年の4月に、新型コロナウイルスの影響で製造業のサプライチェーンが寸断したことを受け、生産拠点が集中する中国から日本への国内回帰や第三国への移転を支援するために、総額2435億円が2020年度補正予算に盛り込まれました。あまり日本のメディアで扱われなくなりましたが、その後どうなったのでしょう。
経済産業省の発表によれば、6月の第一弾として87件の事業で補助金700億円を受けたそうです。またアメリカに拠点を置く自由亜州電台の報道によれば、第二弾とし1670件の事業が補助金を申請中とのことで、日本の産業チェーンの中国からの撤退が進んでいるようです。
第二弾は7月末に申請が締め切られていますが、補助金申請額は1670件合計で政府予算の11倍にもなるそうなので、どれくらいの件数が承認されるのでしょうか?
補助金の目的は、新型コロナ流行で流通網が完全にストップし、サプライチェーンがズタズタに遮断されたことを反省し、中国に集中した産業チェーンを、日本に回帰させたり、他国へ分散させたりすることです。
経済発展とともに人件費が上昇して、数年前から中国企業でも工場を沿岸部から内陸部に移転したり、東南アジアへ移転する企業が増えていました。2019年に日本貿易振興機構が実施した調査では、日本の製造コストを100とした場合に、中国の製造コストが80なのに対して、ベトナムは74でした。中国に工場を置くメリットは年々なくなってきています。今年の新型コロナの流行はこの動きをさらに加速させています。
有名な企業の動きでは、オリンパスが中国での作業停止、オムロン精密電子は蘇州工場を閉鎖、日本電産は自動車・家電用部品の一部をメキシコへ移転、三菱重工が一部生産ラインを自国に移管。東芝機械は上海からタイに移転。アイリスオオヤマが韓国・仁川に移転。アシックススポーツ用品、シャープ家電はベトナムに移転。パナソニック、ニコン、ソニーなどは生産ラインを中国外に移しています。
中国メディアの記事によれば、『新型コロナ流行の影響により、中国から日本への部品などの輸入が滞り、多くの日本企業のサプライチェーンが中断して、生産困難に直面している。2020年2月の中国からの輸入は前年比47.1%減少しているので、このような状況では日本への移転を認めるのは当然』とはしていますが、
中国は、マスクや医療機器の件でも、東京五輪開催の件でも、日本と助け合いながら進めてきた。もし日本がわざわざ生産をシフトするようなことになれば、それは日本企業を圧迫するだけでなく、今後の日中経済貿易協力にも影響を与えることになると述べています。
当然ですが中国国内では日本の動きをあまり歓迎していません。ローソンが中国に2億元(30億円)を投資することや、ウォルマートの高級Sam's Clubストアが、上海に旗艦店を来年中にオープンする予定であることを挙げて、海外からの中国投資は続いていることをアピールしています。
事例は小売店だけですが、人件費の上がった中国では製造業を維持するのは苦しいでしょうね。高く売れる高付加価値商品を生産するか、全自動AI化によるスマート工場化するしか無いでしょう。
参考資料
<自由亜州電台>近1700家在华日企申请搬迁补贴 日本产业链撤离中国
http*://bit.ly/33t0Z2y
<金十数据>斥资157亿,日本欲撤离部分在华日企!多家美企却加大对中国投资
http*://bit.ly/3hqVUwA
<Bloomberg>生産拠点の国内回帰や多元化を政府が支援-サプライチェーン強靱化へ
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