英国政府は10月22日に、英国海外パスポート(BNO)を所持する香港住民のための特別ビザの詳細を発表しました。非暴力抗議活動に参加したり、言論の自由を行使したりした罪で有罪判決を受けた人の申請を拒否しないと強調しました。中国はBNOを有効な渡航書類として認めないことを検討すると脅迫しています。
特別ビザで英国に5年間居住し、英語力などの一定の要件を満たせば、無期限の英国滞在許可の申請を出す事ができます。さらに無期限の滞在資格を得てから12ヶ月後には、正式に英国国籍を申請する事ができます。
特別ビザの申請は来年の1月31日から受け付けられますが、英国政府は特別ビザの数に制限を設けないとしていますので、BNOを所持する香港住民全員に、英国移住の道が開けることになります。
BNOをすでに所持する、またはBNO申請資格を持つ香港住民は、合わせて290万人います。
アメリカに拠点を置く中国語メディア自由亜州電台(RFA)の記事によると、英国によるBNO所持者への特別ビザ発給は、中国政府が香港国安法によって香港人民の権利、自由、自治を制限していることを受けたもので、英国は香港国安法は中英共同宣言に違反していると強調しています。
ジョンソン英首相は国会で、「香港国家安全維持法は、共同宣言に明確かつ重大に違反しており、基本法に謳われている香港の高度な自治権と直接対立しており、共同宣言に謳われている自由と権利を脅かしている。我々は香港のBNO保有者が英国で働き、英国に住み、市民権を取得できるように、英国へのアクセスを許可するということだ」と述べました。
中国は7月1日に、香港で国家安全維持法を施行し、香港の自治が奪われ一国二制度が崩壊した、と欧米諸国から非難されました。
英国による香港住民救済策とも言える、BNO所持者への特別ビザ発給に対して、中国外交部の趙立堅報道官が吠えました。
中国外交部の23日の定例記者会見で、趙立堅報道官は次の様に英国側を批判しました。
「そもそも英国側が先に公約に違反したため、中国は英国国民海外パスポートを有効な渡航書類として認めないことを検討し、さらなる措置を講じる権利を留保する 」
『英国側が先に公約に違反した』については解説が必要です。
英国海外パスポート、いわゆるBNOは英国植民地時代の歴史的遺物であり、香港の返還の過渡期の産物です。
1984年に中英共同宣言に署名した後、中国と英国はこの特別な地位を確認するために覚書を交換しました。
英国側は、BNOパスポート保有者に英国での居住権を付与しないことを明確に約束しています。
趙立堅報道官の言う通り、22日の英国政府の発表は明確に公約違反しています。
また中国外交部がBNO を有効な渡航書類として認めないことを検討していることを明言したのは今回が初めてではなく、今年の 7 月 23 日にも同様の発言をしています。
現在香港住民がBNOで中国本土に入国しようとしても拒否され、香港政府発行のパスポートを要求されるそうです。
今後もしBNO所持者が英国に向けて出国しようとして拒否された場合には、英中間の外交問題になることは必至です。
誤解を恐れずに言いますが、私は香港問題については中国寄りの意見を持っています。これは香港が英国に割譲された歴史的経緯から来ています。
詳細な歴史は「アヘン戦争」でググればすぐにわかると思いますが、無理やり簡単に説明すると、『英国が商品購入代金をアヘンという麻薬で支払ったので、中国が怒って拒否したところ、逆ギレした英国が中国をフルボッコにして香港を奪い取った』事件です。
当時の英国の有力政治家で、のちに首相になるグラッドストーンが「中国がアヘンを禁止するのは当然だ」「正義なき戦争。世界の恥さらし。」と英国政府を非難したのは有名な話です。
暴力で奪い取られたものを、あれこれ条件をつけて返却されたとして、そんな条件など守る必要はないです。
例えば、街を歩いているときに突然暴漢に襲われて、ボコボコにされた上に財布を取られたとして、”財布の中の現金やカードを50年使わない”と約束して返してもらったら、その約束を律儀に守る必要がありますか?
理不尽な言いがかりと暴力で奪われた香港を、返却されるときの約束を守る必要など最初から無いと思います。それを23年も守ってきたのは中国政府の誠意です。
しかし150年にもわたる資本主義の英国統治に慣れ、共産党による社会主義に統治されるのはイヤだという香港住民がいるのも事実でしょう。
その様な人が英国に移住する権利を認めてもいいのでは無いかと思います。
参考資料 *>s
<自由亜州電台>英国国民海外护照签证细节出炉 中国威胁将不承认
http*://bit.ly/31ELioN