米国でWeChatが「ブロック」されたことで、テンセントが所有するアプリを利用することのセキュリティや政治的リスクに改めて注目が集まっています。中国のチャットソフト市場を席巻しているWeChatは、中国当局が人々を監視し、言論を検閲し、反体制派を処罰するための最も強力なツールの1つになっているように見えます。
近年、中国は国民の表現の自由を弾圧する動きを強めており、WeChat経由で投稿した情報が「証拠」となって有罪判決を受けるケースが後を絶たないと、アメリカに拠点を置く国際メディアの自由亜州電台が報時ています。
例えば、中国市民ジャーナリストの張展氏は、2月に武漢入りしてWeChatなどのネットメディアを通じ、混乱した病院の実態や遺族への当局の圧力を発信しました。しかし中国当局から「悪意を持って虚偽情報を伝えた」として逮捕され、12月中には初公判が開かれる予定になっています。
重慶の個人事業家の李懷慶氏は、自身がリーダーを務めるWeChatグループに亡命したチベットの精神指導者・ダライ・ラマに関する情報を投稿したところ、「道徳的反抗、暴力革命による国家権力の倒錯を提唱した」として告発され、懲役20年の判決を受けました。
有識者の中には、中国当局によるWeChatの監視を「現代版シュタージ」と表現する人もいます。シュタージとは旧東ドイツで人民を監視した秘密警察・情報機関のことで、正式名称は国家保安省です。
独裁政権は、あらゆる言論プラットフォームを可能な限り検閲します。
現在全世界で12億人以上のアクティブユーザーを抱えるWeChatは、特に新型コロナウイルスの発生時には、中国当局者の情報検閲の主要なチャンネルの一つとなりました。
WeChatでは、敏感な投稿を削除するだけでなく、新型コロナや人権などの話題を扱うアカウントをブロックし、警察がブロックされたユーザーに事情聴取を行うことがよくあります。検閲を繰り返しているため、WeChatのセキュリティが疑問視されています。
ある有識者は、WeChatでは主に10人以上のグループや友人サークルを監視していますが、それは”中国共産党独裁に有害なコンテンツ “の拡散を止めることを目的としていると指摘しています。
WeChatは敏感な情報カテゴリはAI認識でブロックしているので、自分が発信していると思っていても、実際には誰も見ていないということも起こりうるとも指摘しています。
あるWeChatユーザーは、WeChatグループで香港の「反送中」運動に関連した動画を投稿したところ、アカウントをブロックされた上に、公安に呼ばれて事情聴取されたと言います。
公安処に呼び出されて取り調べを受け、「他の人や他のグループに送ったのか」「 なぜそんなことをしたの?」「情報源は?」などと聞かれ、香港の件を転送しないように警告された上に、スマホを1週間取り上げられたと言います。
WeChatは、ユーザーのプライバシーをさらけ出し、セキュリティ機能に疑問があると批判されてきました。
モバイルソフトの開発者によると、WeChatユーザーの情報を秘密にできないのは、WeChatがピアツーピアの暗号化ではなく、クライアントからサーバーへの暗号化を使用しているからだと説明しています。
「クライアントからサーバーへの暗号化」は、自分と相手以外に、サービス提供者が自分の発言内容を見ることができるため、情報が漏れるリスクがあるということです。
ピアツーピアなら、自分と相手以外は何を言っているのか誰にもわからないので、 暗号化パスワードが破られない限り安全だと開発者は説明しています。
彼は、「WeChatは意図的にクライアント側の暗号化を使用しました。中国のSNSは全てサービスセンターが必要で、中国政府が監視できます。逆に監視できない情報の拡散を許しません。 だからこそ、ツイッターやフェイスブック、ラインなどのSNSは中国大陸では使えないのです。」と語っています。
日本ではWeChatユーザーは少数派だと思いますが、中国大陸ではWeChatで公的機関から広報が送られて来たり、WeChatペイでコンビニ、デパート、レストランや地下鉄、バス、タクシーの支払いができ、個人間のお祝い金もWeChatで贈るなど、通常の生活に無くてはならないものとなっています。
そのようなWeChatが中国共産党の監視下にあるとしたら、使うのもちょっと覚悟が入りますね。友人の中国人は「気にしても仕方ないでしょ」と言ってます。その通りですけどね。
アメリカでは司法省がWeChatやTikTokのダウンロードを禁止し、裁判所が禁止を差し止めるという攻防が行われています。
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参考記事 *>s
<自由亜州電台>微信安全性存疑 只因肩负“政治任务”
http*://bit.ly/3aLuCS5