中国共産党の習近平総書記は、「共同富裕」という言葉を頻繁に口にしています。「共同富裕」とは改革開放によって広がった貧富の差を是正するために、「先に儲けた者には儲けを社会に還元させる」という意味です。最近、共同富裕を実現するために、「三次分配」が実施され始めています。
米政府系放送局の自由亜州電台の記事より。
鄧小平氏が1978年に改革開放政策を打ち出して以来、中国は経済発展を続けてきました。
鄧小平氏の唱える、「先に富める者から富んでいけ」という先富論は、国家を大いに発展させましたが、先に富める者と、取り残された者との間に、巨大な貧富の差を生じさせてしまいました。
中国の上位20%の富裕層の可処分所得の平均は、最下層20%の可処分所得の10倍以上あり、ジニ係数は0.46と社会騒乱多発の警戒ライン0.4を大きく超えています。
習近平総書記は、広がった貧富の差を是正し、共同富裕を実現するために、「三次分配」を制度的に配置すると提案しました。
8月17日に召集された中央財経委員会第10回会議では、三度の分配を通して、高収入の調整を強化して、合法的な収入を保護し、過度の高収入を合理的に調整し、高収入の人々と企業にさらに多く社会還元するよう奨励することが提起されました。
三度の分配とは、「一次分配(市場メカニズムによる分配)、二次分配(税制、社会保障による分配)、三次分配(寄付、慈善事業)」と表現されています。
卑近な例を示すと、人口100人の国に5件のコンビニ店がありました。各店はそれぞれ企業努力して商品を売り上げて収入を得ました。これが一次分配です。
立地条件や、企業努力の差により、各店の収入には格差があります。そこで収入の多い店からはたくさんの税金を、少ない店からは少ない税金を徴収して、収入格差を是正します。これが二次分配です。
それでもトップの店の収入と、最下位の店の収入とには、10倍以上の格差があるので、トップの店は(自ら進んで)寄付をしたり、慈善事業を行うことを奨励します。これが三次分配です。
上記は100%正確な説明というわけではありませんが、大まかな意味は掴んでもらえたと思います。
三つの分配は中国固有のものというわけではなく、どの国でも行っているものです。バイデン大統領は選挙公約で富裕層への増税をあげていましたが、これは二次分配そのものです。
中央財経委員会第10回会議直後の18日には、テンセントが500億元(約8500億円)を投じて「共同富裕特別プロジェクト」を開始すると発表し、積極的に国家の戦略に呼応する姿勢を示しています。
テンセントの動きは三次分配に当たります。中国共産党に忖度した動きであることは、自明の理でしょう。
テンセントと同じく、中国共産党の技術規制に苦しむ企業である小米、美团、拼多多も巨額の慈善寄付金を出すことを検討中と表明しています。
ここで疑問に思うのは、企業や個人が寄付した後、その寄付金が公平に使われるのかどうかです。
中国のNGOは十分な信頼性を持っておらず、最終的には政府が運営し、調整を行うことになると考えられます。
企業や個人が政府に直接お金を渡さなくても、政府のアドバイスに従って資金を配分することもあるでしょうし、 この分野には必ず共産党政府が関わってくると思われます。
9月1日から共産党は、50万元を超える法人口座と10万元を超える個人口座を厳格に調査・管理すると、正式に通知を出しました。
口座の所有者は積極的に調査を受けることが要求され、預金の出所や出金先を、中央銀行に管理されます。
管理された口座の持ち主、すなわち口座残高が高額な所有者は、寄付や慈善事業を要求されることになると思われます。
これは個人も企業も、稼いだ利益は共産党に吸い上げられることになり、働くモチベーションが削がれることになります。
文化大革命の再来と指摘する識者もいますが、中国では企業も個人も利益を上げれば税金と寄付で持っていかれてしまい、モチベーションが低くなるでしょう。
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参考記事
<自由亜州電台>"三次分配"能达致"共同富裕"吗? 学者: 假人民之名的打劫
http*://bit.ly/2UNhiqx