国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、中国政府がチベット自治区で、幼稚園の子どもを含めた住民から強制的にDNA採取を進めていると非難する声明を発表しました。
ドイツ国営の国際放送事業体の徳国之声の記事より。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は5日、チベットの全7行政区にまたがる少なくとも14カ所での中国公安によるDNA採取に関する調査報告書を発表しました。
中国政府のウェブサイトに掲載されている資料によると、チベット公安部は2019年7月に「DNAデータベース」構築のための公開入札を開始し、 同年11月には、チベット自治区林芝公安局も同様の案件で調達通知を出していることがわかりました。
公開された公式情報によると、チベット自治区チャムド市では、指紋やDNAサンプルを含むデータベースを構築するため、2019年5月から1年間の収集活動を行いました。
チベット自治区当局は3,700人以上の警察官を動員し、最終的に市内人口の69%にあたる52万人以上からサンプルを採取しました。この時公安当局は、無秩序の取り締まりと称して採取したサンプルと逃亡者をDNAプロファイルを比較し、26人の逃亡者を逮捕しました。
2020年12月には、青海省ゴロク・チベット族自治州瑪沁県公安局は5歳以上の男性全員からDNAを採取しており、今年4月にはラサ公安局が幼稚園児を含む人々からDNA血液サンプルの採取を開始すると発表しており、若年層がDNA採取のターゲットにされる傾向もあります。HRWがいくつかの公式報告書を検討しても、若年層からのDNA採取前に両親へ相談や承諾を得た記録はありませんでした。
チベット自治区当局は住民に対して、DNA採取は公安当局の逃亡者逮捕を助け、捜査の効率を高め、公安当局が事件を解決し、犯罪者を効果的に取り締まるための根拠とするためだと説明しています。
HRWは、公安当局が一時滞在者を含む住民にDNA提供を強制するためには、犯罪の確実な証拠がなくてもよいこと、住民が血液サンプルの提供を拒否できないことを暴露しています。
HRWは数年前に、新疆ウイグル自治区当局が12歳から65歳までの住民からDNAサンプルを採取していたことを示す中国の公文書を公開しています。
オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が2020年に発表した報告書によると、中国のチベット以外の省市におけるDNA収集プログラムは、外国人移民、出所者、容疑者、国家安全保障上の『重要人物』に分類される人々を対象としており、DNAが収集された男性の数は各省市の人口の8.1%から26.4%と推定されていると指摘されています。
チベット自治区政府は今年1月から『大訪問、大調査、大解決』キャンペーンと称して、地方政府公安局が各家庭を訪問して「状況を徹底調査」しており、農村部でのDNA採取もこのキャンペーンの一環です。 当局によると、この取り組みは、警察と市民の関係改善と情報発信を目的としていると説明しています。
HRWは、中国政府によるDNAデータの収集が、捜査に関わるかどうかにかかわらず、国民全体を対象とし、国民の同意を求めず、サンプルの使用目的も説明しないことを懸念しています。
HRWは、強要されたり、合理的な理由なく血液サンプルを採取することは、人権やプライバシーの侵害であると指摘し、チベットと新疆におけるDNA採取作業の規模は、他の省・市をはるかに超えており、地域住民の監視をさらに強化し、全個人にまで拡大しようとする当局の意思の現れだと批判しています。
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中国政府の人権侵害はますますエスカレートしています。日本のマスコミや人権団体が何も言わないのはなぜなんでしょうか?
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参考記事
<徳国之声>人权观察:西藏大规模采集DNA 对象小至幼稚园人权观