米英が貿易協定に合意、一方トランプは中国関税について「これ以上高くはできない」
米英の貿易協定が発表された一方で、米国と中国の貿易協議が行われようとしています。ドナルド・トランプ米大統領は、中国への関税はこれ以上高くできないと言っています。そして米英の合意に触発され、8日の米株式市場は軒並み上昇しました。
米国議会の出資によって設立された短波ラジオ放送局の自由亜州電台の記事より。
10日には米中がスイスで貿易問題に関する協議を行いました。8日、ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスでの記者会見で、現在中国に課している145%の懲罰的関税を下方修正する可能性があると述べ、内容を緩めています。
8日、トランプ大統領はホワイトハウスで英国との新たな貿易協定を発表しました。BBCは、英国が米国との関税交渉を完了した最初の国であると報じました。今回の合意では、米国は一部の英国車に対する輸入関税を25%から10%に引き下げ、年間10万台の輸入枠を設けることで合意しました。
これと引き換えに、英国航空は100億ドル相当のボーイング機を購入し、英国はエタノールの関税を引き下げます。さらに、米国は英国の鉄鋼とアルミニウムの一部について無関税を認めました。さらに両国は、互いの国から最大1万3000トンの牛肉を無関税で輸入できるようにすることで合意しました。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、この合意は米国と英国が急ぎ足で結んだように見え、英国が長い間望んでいた包括的な貿易協定にはほど遠いだけでなく、米国が関税問題での進展を素早く示すための対応のようにも見えたと指摘しています。
トランプ大統領が英国との貿易協定のメリットを即座に発表し、今後数週間で他の国々とのさらなる合意を期待すると述べたことで、米国株式市場の指数はこの日の最高値を更新しました。
その直後、米中貿易協議も注目されました。世界の2大経済大国である中国と米国は10日にスイスで貿易協議を行い、双方が「重要なコンセンサス」に達し、新たな経済対話の枠組みを設けることで合意したと表明し、12日に共同声明を発表するとしています。
ホワイトハウスの記者会見で、ある記者がトランプ大統領に、10日の協議がうまくいったとして、中国への関税を引き下げる可能性はあるかと質問しました。
トランプ大統領は、「まあ、可能性はある。 様子を見よう。今のところ、これ以上高くなることはないだろう。今は145%だから、確実に下がるだろう。その後、我々は非常に良い関係を築けると思う。」と述べました。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
米英貿易協議の合意と今後の米中および米国と他国の関税協議の予測
1米英貿易協議の合意
2025年5月、米国と英国は貿易協議において大筋合意に達しました。この合意は、米国が掲げる一律10%の関税を維持しつつ、特定の分野で相互の貿易障壁を軽減する内容と報じられています。
この動きは、トランプ米政権の通商政策が「相互関税」を軸に各国との二国間交渉を重視する方針を反映している一方で、米中間の関税問題を巡る閣僚級協議もスイス・ジュネーブで開始され、両国が貿易戦争の緊張緩和に向けた妥協点を探る動きが注目されています。本稿では、米英貿易協議の合意を踏まえ、米中および米国と他国との関税協議の今後の展開を、ビジネス視点から具体的に予測します。
2. 米英貿易協議の概要とその意義
2.1 合意内容
米英貿易協議の合意では、米国が輸入品に課す一律10%の関税が維持される一方、英国との間で農産品や工業製品の特定分野における関税軽減や非関税障壁の緩和が盛り込まれたとされます。この合意は、トランプ大統領が推進する「アメリカ第一主義」に基づく通商政策の一環であり、英国にとってはブレグジット後の新たな貿易枠組みの構築という観点から重要な一歩です。
2.2 ビジネスへの影響
米国企業: 農産品輸出の拡大により、米国の農家や食品産業が恩恵を受ける可能性が高い。米ホワイトハウスの国家経済会議(NEC)ハセット委員長は、英国との貿易協定が「米農家に恩恵をもたらす」と述べています。
英国企業: 工業製品やサービス分野での市場アクセス拡大が期待される。特に、金融サービスや自動車産業において、英国企業は米国市場での競争力強化を目指す。
グローバルサプライチェーン: 米英間の関税軽減は、両国を拠点とする多国籍企業のコスト構造に影響を与え、欧州やアジアの競合企業に対する競争優位性を高める可能性があります。
2.3 米英合意の国際貿易への示唆
米英合意は、米国が二国間交渉を通じて個別国との貿易条件を最適化する戦略を成功させた事例として、他国との交渉におけるモデルとなります。トランプ政権は、従来の多国間枠組み(例:TPPやWTO)よりも二国間交渉を優先しており、このアプローチが今後の米中や他国との関税協議にも影響を与えると予測されます。
3. 米中関税協議の現状と予測
3.1 現状:ジュネーブでの閣僚級協議
2025年5月10~11日、米国と中国はスイス・ジュネーブで関税問題を巡る閣僚級協議を実施しました。この協議は、トランプ大統領が中国製品に145%の追加関税を課し、中国が報復として米国製品に125%の関税を課すなど、貿易戦争がエスカレートする中で行われた初の対面交渉です。両国は緊張緩和を目指し、以下の点で進展が見られたと報じられています:
-米国側は関税率を60%未満に引き下げる目標を設定。
-中国側は一部関税項目の除外リスト化を検討。
両国は今後の協議枠組みの構築で合意し、「著しい進展」があったと発表。
3.2 予測:米中関税協議の展開
米中関税協議の今後の展開は、以下の要因に左右されると考えられる。
3.2.1 トランプ政権の交渉姿勢
トランプ大統領は、自身のSNSで「中国への関税は80%が妥当」と発言し、現在の145%からの大幅引き下げを示唆しました。しかし、米政権は一方的な譲歩を避ける方針を強調しており、関税引き下げには中国側の対等な措置(例:対米関税の引き下げや市場開放)が条件となります。トランプ政権の強硬姿勢は、2026年の中間選挙を見据えた国内支持層へのアピールと、米国の貿易赤字削減という長期目標に根ざしています。
3.2.2 中国の対応
中国は、米国との協議で「中国の利益を損なう合意」を受け入れないと他国に警告しており、報復措置の可能性を示唆しています。一方で、中国経済は米国の高関税による輸出減速やサプライチェーンの混乱に直面しており、妥協の余地もある。何立峰副首相は、ジュネーブ協議を「重要な第一歩」と位置づけ、今後の交渉継続に前向きな姿勢を示しました。中国は、特定の品目(例:農産品やエネルギー)の対米輸入拡大や、技術移転規制の緩和を交渉カードとして提示する可能性が高いと思われます。
3.2.3 経済的影響と妥協点
米中の高関税は、両国経済に顕著な打撃を与えている。米国では、輸入コストの上昇によるインフレ圧力や企業収益の悪化が懸念され、中国では輸出企業の業績悪化が顕在化しています。ブルームバーグは、関税率を60%未満に引き下げることで「経済的な痛みが和らぐ可能性がある」と分析している。したがって、以下のような妥協点が予測される:
-短期的(2025年内): 米中双方が関税率を60~80%程度に引き下げる
-暫定合意。特定品目(例:米国の農産品、中国の電子部品)の関税除外リストを策定。
中期的(2026~2027年): 貿易不均衡是正に向けた構造改革(例:中国の補助金削減、米国の技術輸出規制緩和)を議題とした包括的協議の開始。
リスク要因: トランプ大統領の予測不可能性や地政学的緊張(例:台湾問題)の悪化が、交渉の停滞や再エスカレーションを引き起こす可能性。
3.3 ビジネスへの影響
米国企業: 関税引き下げが実現すれば、製造業や小売業のコスト負担が軽減され、消費者物価の上昇が抑制される。特に、電子機器や自動車部品のサプライチェーンが安定化します。
中国企業: 輸出競争力の回復により、ハイテクや消費財セクターが恩恵を受けます。ただし、新市場開拓(例:東南アジア、アフリカ)へのシフトが続きます。
グローバル市場: 米中の緊張緩和は、WTOやG20を通じた多国間貿易ルールの再構築を促し、新興国経済の安定化に寄与する可能性があります。
4. 米国と他国との関税協議の予測
4.1 日本
トランプ大統領は、日本に対し一律10%に加え、非関税障壁を考慮した14%の上乗せ関税(計24%)を課す方針を表明しました。日本は、自動車や電子機器の輸出に依存する経済構造上、関税引き下げ交渉を急ぐ必要がある。以下のシナリオが予測されます:
交渉の焦点: 日本の自動車産業は、米国市場での関税軽減を最優先課題とする。対米投資拡大や現地生産比率の引き上げが交渉材料となる。
予測: 2025年末までに、米日間で特定品目(例:自動車部品)の関税を5~10%に引き下げる暫定合意が成立。包括的協定は2026年以降に持ち越し。
ビジネスへの影響: 日本の自動車メーカーは、米国での生産コスト上昇を吸収しつつ、輸出競争力を維持。米国企業は、日本製部品の調達コスト低下で恩恵を受ける。
4.2 EU
欧州連合(EU)は、米国の高関税に対抗し、報復関税の準備を進めています。米英合意をモデルに、EUは農産品やエネルギー分野での譲歩を軸に交渉を進める可能性が高いとおもわれます。
予測: 2026年初頭までに、米国とEUが農産品と工業製品の関税を相互に5~7%に引き下げる部分合意を締結。包括的協定は、気候変動やデジタル貿易のルール設定と連動し、長期化する。
ビジネスへの影響: 欧州の自動車や化学産業、米国のエネルギー企業が市場アクセス拡大で恩恵を受ける。
4.3 カナダ・メキシコ(USMCA枠組み)
USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に基づく北米市場は、米国の関税政策の影響を最小化する枠組みとして機能する。カナダとメキシコは、関税ゼロの維持を目指し、米国との再交渉に応じる姿勢を示している。
予測: 2025年中に、USMCAの改定交渉が開始され、原産地規則の強化や労働基準の調整が議題に。関税引き上げは回避される可能性が高い。
ビジネスへの影響: 北米の自動車やエネルギー産業は、安定したサプライチェーンを維持し、グローバル競争力を強化。
5. リスクと不確実性
以下の要因が、関税協議の予測に不確実性を与えるでしょう:
トランプ政権の政策変動: トランプ大統領のSNS発言や突発的な政策変更が、交渉の進展を阻害する可能性。
地政学的緊張: 米中の台湾問題や、南シナ海での対立が貿易交渉に波及するリスク。
グローバル経済の減速: 高関税の長期化による世界貿易の縮小や、インフレ圧力の増大が、各国の交渉姿勢を硬化させる可能性。
国内政治: 米国の2026年中間選挙や、中国の共産党大会が、両国首脳の譲歩余地を制約する。
6. ビジネス戦略への提言
米中および米国と他国の関税協議の不確実性を踏まえ、企業は以下の戦略を検討すべきである:
サプライチェーンの多角化: 米中間の関税リスクを軽減するため、東南アジアやインドでの生産拠点拡大を加速。
ローカル生産の強化: 米国やEU市場での現地生産比率を高め、関税コストを最小化。
市場開拓: 中国企業はアフリカや中南米、米国企業はインドや東南アジアなど、新興市場への進出を強化。
政策動向のモニタリング: トランプ政権や中国政府の通商政策の最新動向をリアルタイムで追跡し、柔軟な対応策を準備。
7. 結論
米英貿易協議の合意は、米国が二国間交渉を通じて貿易条件を最適化する戦略の成功例であり、米中や他国との関税協議の先行指標となる。米中関税協議は、2025年内に60~80%への関税引き下げを軸とした暫定合意に至る可能性が高いが、包括的解決には時間を要する。日本やEU、カナダ・メキシコとの交渉も、特定品目の関税軽減を優先しつつ、長期的な枠組み構築に向けた議論が続く。企業は、関税リスクを軽減しつつ、新たな市場機会を捉える戦略が求められる。引き続き、政策動向や経済指標を注視し、柔軟な対応が不可欠である。
|
参考記事
<自由亜州電台>美英达成贸易协议同时 特朗普谈中国关税:“不可能再高了”