高齢者に対する安心感とケアは、常に近代文明社会の特徴のひとつです。生きる権利を人権として重視する中国政府にとって、これは避けて通れない問題であることは間違いありません。では、人口構造の高齢化が進む中国において、高齢者施設の建設や投資はどのような状況なのでしょうか。
米国議会の出資によって設立された短波ラジオ放送局の自由亜州電台の記事より。
中国の『経済観察報』はこのほど、企業検索の最新統計を引用し、高齢者介護施設関連事業の登録件数が2019年から現在まで急減傾向にあることを明らかにしました。
今年12月11日現在、中国の高齢者介護施設関連企業の登録数は681社で、2023年通年に比べ22.5%減少し、2019年通年の26%しかありません。
つまり、わずか5年で、中国の高齢者介護施設は7割も激減したことになります。この理由は何なのでしょうか?
この疑問に答えるには、やはりまず中国の人口動態を把握する必要がありそうです。
中国国家統計局が今年初めに発表した公式数値によると、2023年末の中国の人口は14億0967万人で、前年末から208万人減少しました。
そのうち、65歳以上の人口は2億1676万人、15.4%に達し、60歳以上の人口は2億9697万人、21.1%となっています。
また、中央財経大学が12月14日に発表した「中国人力資本報告2024」によると、1985年から2022年まで、中国の労働力の平均年齢は32.25歳から39.72歳へと急速に上昇しました。これは、中国の労働力の構造も高齢化が進んでいることを意味します。
外部からは、高齢化と出生率の低下がいずれ中国経済を悩ませる根本的な問題になるのではないかと懸念されています。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国経済が低迷を続け、不動産市場が低迷している現状では、地方政府は年金支給などの公共サービスのための資金がますます不足していると指摘しました。
公的な背景を持つシンクタンクである中国社会科学院は、2019年の段階で、政府からの補助金があったとしても、中国の都市労働者向けの国主導の基礎年金基金は、2035年までに資金が底をつき、新しい労働者からの拠出に全面的に頼ることになるだろうと予測しています。
では、中国の高齢者介護産業はどのようにして「高齢者から奪う」ことから赤字に転落し、さらに多くの高齢者介護施設が閉鎖に追い込まれたのだろうか?
経済観察報は、その答えとして、多くの年金受給者の話を引用しています。彼らは、「高齢者が入居したがらない」「高齢者の消費力が限られている」ことが主な原因だと考えています。
このことから、「高齢者の安心感」は老人ホームの数だけで解決できる問題ではなく、政策的な支援や基本的な社会福祉、投資などが絡んでくる問題であることは明らかで、中国政府が本格的に向き合うべき課題なのかもしれません。
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中国は超高齢化社会に向かい、介護人材不足が深刻化しています。2024年には65歳以上が総人口の15%を超える見込みで、介護需要が急増する一方、供給は追いついていません。原因は人口減少と介護職の低賃金・過酷な労働条件です。対策として、中国政府は職業訓練の強化、スマート介護技術の導入、地域密着型ケアの推進を行っています。また、外国人介護労働者の受け入れも検討中です。これらは持続可能な介護体制の構築に向けた重要な一歩ですが、都市部と地方の格差是正や社会保障の充実も課題として残ります。
超高齢化社会に近く突入、介護人材不足とその対策(中国:2024年1月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)
参考記事
<自由亜州電台>五年锐减七成 中国养老机构怎么了?