中国政府がモンゴル語での学校教育を制限する方針を示したことから、内モンゴル自治区では反発したモンゴル人よる授業や抗議活動が広がっています。日本のマスコミも扱いは小さいながらも報じていますので、知っている人もある程度はいるでしょう。中国による少数民族弾圧はチベット人、ウイグル人に続き、ついにモンゴル人にも弾圧の手が伸びました。これには56の民族と世界最大の人口14億人を抱える中国の悩みが垣間見えます。
内モンゴルでのモンゴル人による抗議活動は、中国政府が兼ねてから準備していた「教科改革」が2020年9月からの新学年から実施されたことに端を発します。
「教科改革」は主要3教科(言語、政治、歴史)では国家公用語で授業を行うことを義務づけたものです。国家公用語とは当然ながら北京語です。従来はモンゴル語で授業が行われていました。
「教科改革」に反発した生徒や家族が、モンゴル語を話す教師を準備して独自に授業を行おうとした所、公安や武装警察が学校を封鎖して生徒を外に出させないようにしたことから、抗議活動が広がりました。ちなみに内モンゴル自治区の学校は全寮制だそうです。家業が遊牧ですから、通学できる学校はありせんね。
学校に閉じ込められた生徒を解放しようとした母親が武装警察に暴行を受け、それを見た生徒が校舎から飛び降りた事件も発生し、抗議活動も激しくなっている模様です。
中国国内では内モンゴルの抗議活動は全く報じられていません。これは香港の民主化デモも中国内ではほとんど報じられていなかったことと同様に、中国政府によって情報統制が行われているのでしょう。
中国政府の情報統制がかかっている案件は、欧米のジャーナリストの報道を待つしかありません。多維新聞に詳しい解説記事がありました。多維新聞は、アメリカのニューヨークに拠点を置いている中国語のニュースウェブサイトで、中華人民共和国の政治ニュースを専門的に扱っています。
多維新聞の記事によれば、「教科改革」で北京語の使用を強制するきっかけとなった事件が、2000年代に新疆ウイグル自治区でありました。2000年に新疆教育局の局長に就任したウイグル人シャタール・シャウティ氏は在任中の2009年まで新疆ウイグル語など少数民族言語の教科書や副教材の作成を主導していた際に、漢民族の役人がウイグル語を習得していないことに便乗して、国民の団結と民族統一に不利な「汎トルコ主義」の思想と「脱中国化」の宣伝をしたとされています。2017年2月、「重大な懲戒違反の疑いがある」として調査を受け、強制措置がとられました。
このようにして制定された「教科改革」ですので、内モンゴル自治区に限定して実施されているわけではなく、全国で実施されています。中国の少数民族の自治区は、内モンゴル自治区以外に、広西チワン族自治区、チベット自治区、寧夏回族自治区、新疆ウイグル自治区がありますが、4つの民族自治区を含む中国の他の地域では、まだ同様の状況は発生していないようです。
中国共産党は、上述の新疆ウイグルでの事件や香港での民主化運動の高まりなどで、各地域や少数民族自治区がバラバラになることを非常に恐れており、中国共産党による統一を維持するために、まず教育によって幼い頃から北京語を学ばせることが重要と考えているのようです。
このような理由で中国共産党が「教科改革」を停止することは考えられませんので、内モンゴル自治区でのモンゴル人の抗議活動がどうなるか注目しています。
チベット人やウイグル人が抗議していないということですが、今までにかなり弾圧されてきていますし、監視体制も確立しているために、抗議活動も徹底的に押さえつけられているのだろうと思います。
また、モンゴル人はかつては中国を支配した北方騎馬民族であり、万里の長城(Great Wall)は、中国民族が北方騎馬民族とは戦っても全く敵わないために作られた壁です。かつては世界を制覇した誇りある民族ですから、抗議活動で収まればいいのですが、反乱に発展したら中国共産党による統一が瓦解し兼ねません。どうやって抑えるつもりなのでしょうか?
参考資料
<多維新聞>中国吸取教训力推“教材改革” 内蒙古民间抵制
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