レアアースの一大産地である中国は、米中貿易戦争の駆け引きの手段に使うために、割当や輸出制限を課して米国に対抗しようとしています。しかし、中国の切り札のはずのレアアースは最近ジレンマに直面しているようです。アメリカに拠点を置く中国語放送の自由亜州電台が実情を伝えています。
世界有数のレアアース産出国である中国ですが、今夏の中国のレアアース輸出量は全体で前年同期比約6~7割減少しました。
レアアース輸入の8割を中国に頼る米国への報復処置として、取引規制を行なっているとの見方もあります。
2006年以来、中国は、総量管理、生産計画管理、採掘制限など、レアアース採掘に関する一連の政策を継続的に実施してきました。
しかし、このような経済制裁色の濃厚な対策へは、レアアース業界の間で不満が噴出しています。
英国フィナンシャルタイムズのレポートによれば、採掘割当が生産者の利益に打撃を与えている一方で、レアアースの供給源の不安定さを引き起こしていると述べています。
内モンゴル自治区の包頭市商業会議所が去年発表したレポートによると、レアアースの不足のために地元の磁石工場の稼働率は50%未満でした。
中国政府によるレアアースの採掘規制は、国内産業にも負の影響を与えています。アナリストによれば、過去6年間で中国のレアアース生産量は、中国国内の需要を30%以上下回り、このギャップは今年も拡大すると予想されています。
中国でレアアース需要が増加した理由は、低レベルの粗加工企業が数多く立ち上げられたためで、レアアースの需要は高まっているが、中国にはハイエンドの利用技術がなく、高付加価値の生産ができず、粗加工品は依然として日米に輸出されていると記事では伝えています。
中国のレアアース需要が供給量を上回っているため、不足分は輸入に頼っていて、輸入量の38%を米国に、30%をミャンマーに頼っていると言います。
アメリカもレアアースの80%を中国に頼っているとなっていますが、これはアメリカで採掘した原石を中国に輸出し、中国で粗加工した物をアメリカに輸出していると言う構造です。
中国はレアアースの年間生産量を10%引き上げて過去最高としていますが、今年上半期の輸入量は昨年同期に比べて74%も増えています。
中国は世界最大のレアアース生産国で、世界の採掘量の6割を占めているのにもかかわらず、世界最大のレアアース輸入国でもあります。
全世界が中国にレアアースの採掘と粗加工を頼っているのは、環境への影響が大きいためとされていて、中国は利益を優先して、環境問題を後回しにしているためとアナリストは述べています。
しかし、中国がレアアースを戦略物資として使い始めてから、世界各国がレアアース資源の探査を増やしており、オーストラリアや日本は近年、かなりの埋蔵量を発見しており、各国は中国のレアアースへの依存度を徐々に減らしていくと考えられています。
中国北部で20年間に渡って行われてきたレアアースの精錬から発生した放射性毒素が、ゆっくりと地中に染み込み、黄河に近づいています。
中国南東部の広東省では、露天のレアアース採掘場からの強酸などの腐食性物質が地中に流れ込み、周辺の田んぼや小川に被害を与えています。
「中国人の意識では、環境は人を中心としているが、欧米諸国では人は自然界の一部に過ぎない。」と解説する中国人学者もいるそうです。
中国政府は野心的すぎて、環境を破壊する巨大プロジェクトに拘って資源を浪費してから、環境を修復しようとするプロジェクトを立ち上げるという悪循環に陥っていると、前述の中国人学者は指摘しています。
レアアースはアメリカも重要資源と位置付けるほど貴重な戦略物資ですが、中国では環境を破壊する厄介な物資の様です。
参考資料 *>s
<自由亜州電台>生产大国变进口大国 中国稀土策略面临困境
http*://bit.ly/3kHUksy