世界的な新型コロナ流行が続き、インドでは制御不能状態に陥っている中、世界保健機関(WHO)はこのほど、中国のシノファーム社とシノバック社の新型コロナウイルスワクチンのエビデンス・アセスメントを発表し、18歳から59歳の成人に対する高い予防効果を確認する一方で、60歳以上の高齢者や合併症を持つ人に対するワクチンの有効性と安全性に疑問があることを明らかにしました。
アメリカに拠点を置く国際メディアの自由亜州電台の報道から。
新型コロナ感染症はこれまでに、世界中で1億5400万人以上の感染例と300万人以上の死亡例が報告されています。
中国はワクチン外交と称して多くの国にワクチン支援を行なっていますが、そのデータの透明性や安全性には懸念が持たれています。
中国のシノファームとシノバックのワクチンについて、WHO予防接種に関する戦略的諮問委員会(Strategic Advisory Group of Experts: SAGE )の報告書によると、18歳から59歳までの人に対しては、予防効果が「高度に信頼できる」証拠があり、安全性も「中程度に信頼できる」証拠があるとされています。
しかし、60歳以上では、シノファームワクチンとシノバックワクチンの有効性に関するエビデンスはそれぞれ、「信頼度が低い」「信頼度が中程度」、安全性に関するエビデンスは「信頼度が非常に低い」「信頼度が低い」でした。
また、合併症のある人では、シノファームワクチンの有効性と安全性の両方に関するエビデンスは「信頼度が非常に低い」、シノバックワクチンのデータは「信頼度が中程度」「信頼度が低い」でした。
シノファームワクチンの第3フェーズの臨床試験における有効性は、18~59歳で78.1%と言われています。 しかし、このデータは60歳以上の人については推定できず、報告書では明らかに臨床試験のデータが不足しているとしています。
シノバックワクチンも予防効果が67%ありますが、18~59歳の人口でしか高い信頼性が検証されていません。
米国のシンクタンクである外交問題評議会のグローバルヘルス担当高級研究員の黃嚴忠氏は、WHOのレポートはワクチンそのものの有効性を評価するものではなく、入手可能な臨床試験データの信頼性や信用性を評価しているものだと述べています。
黃嚴忠氏は、「ワクチンが60歳以上の人に有効か否かを判定するにはデータが不足していることを意味しており、有効性がないことを意味しているのではない」と述べています。
第3フェーズの臨床試験は、感染者の多いところで実施する必要があるので、インド、ブラジルなど発生率の高い国で行うべきなのですが、インドとは関係が良くなく、ブラジルは大統領が好意的でないために、シノバックワクチンはサンパウロ州でしか臨床試験ができませんでした。
臨床試験に参加する高齢者の割合が非常に少なかったことが、60歳以上の高齢者に対する有効性が保証できない理由です。
WHOが報告したシノファームワクチンの第3フェーズの臨床試験は、アラブ首長国連邦、エジプト、ヨルダンなどでの大規模な試験で、合計2万人以上の人が参加していましたが、60歳以上の人は約400人しかいませんでした。
中国は最近、60歳以上の年齢層を対象にワクチン接種を大々的に推進する意向を示しています。
中国国内の第1相および第2相臨床試験の高齢者グループや国外での大規模臨床試験から得られたフィードバックにより、高齢者グループのワクチン接種による副反応の発生率は比較的低く、成人グループと比較的類似していると述べています。
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WHOは5月7日に、シノファーム製の新型コロナワクチンについて、緊急使用リストに新たに加えたと発表しました。
WHOは、シノファーム製ワクチンの安全性を確認し、有効性は79%と推定されるとして緊急使用を承認したと明らかにしました。
欧米以外で開発されたワクチンが、WHOで承認されるのは初めてです。
今後は日本でも中国製ワクチン承認に向けた動きが出てくるかもしれませんが、現在のところ60歳以上の安全性と有効性が保証されていないことは忘れてはいけませんし、中国が正しいデータを公表するのかどうかもチェックする必要があると思います。
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参考記事
<自由亜州電台>世卫评估中国疫苗:数据不够 信心不足”
http*://bit.ly/3uwvsZI