アフガニスタンでは、タリバンが驚異的な勢いで勢力を拡大し、ガニ大統領が隣国タジキスタンに脱出し、アフガニスタン政府は事実上崩壊しました。これは、アフガニスタン政府軍を外国の援助なしで戦えるタフで独立した部隊にしようとした、20年間のアメリカの努力が失敗したことを意味しています。
台湾の国営メディアである中央通訊社の記事より。
タリバンは米国の撤退発表後の5月から攻勢をかけており、ここ数日で政府軍は15以上の主要都市で敗北し、13日にはアフガニスタンで最も重要な州都であるカンダハルとヘラートが陥落し、15日にはガニ大統領が首都カブールを脱出し、隣国タジキスタンに向かいました。
アフガニスタン政府軍はして倒れることが頻発し、数百万ドルの米国の機材や米国が支援したヘリコプターがタリバンに捕獲された画像がインターネット上で拡散しています。
米国は過去20年間に830億米ドル(約9兆1千億円)以上を投じて、アフガニスタン軍の構築に必要な武器、装備、訓練を提供してきましたが、すべてが水の泡となりました。
軍や警察は長い間士気が低く、政府のために働くことを嫌がっており、すでに戦わずして戦争に負けている状態でした。
政府関係者は汚職に走り、実際の政府軍や警察の人数が帳簿上の数よりも、はるかに少ないという事実を十分に認識しているにもかかわらず、それを無視していたました。
このため、アフガニスタン軍隊や警察は、政府の指導者に深い恨みを抱いていました。
米軍の撤退に乗じてタリバンが攻勢に出たことで、アフガニスタン軍や警察には「アシュラフ・ガニ大統領の政府のために働く価値はない」という考えが強まりました。
先週のカンダハールの陥落を前に、地元の前線では、数週間にわたる激しい戦闘中、数日分の配給として汚れたジャガイモ1箱が届いただけでした。
他に届いた物は何もなく、食料や弾薬が不足し、消耗した部隊の士気に決定的な打撃を与えました。
アフガニスタン空軍のパイロットたちは、敵の砲火の中で延々と避難任務を続けたのに、将校たちは機体の状態を気にしているだけで、自分たちのことを全く気にかけていないと、不満を訴えていました。
アフガニスタン北部のクンドゥーズ州の州都クンドゥーズが陥落した時、アフガニスタン陸軍第217軍団のアッバス・タワコリ軍団長は、「最も残念なのは、多くの国会議員や政治家が敵に協力しているように見えることだ。どこも本当は負けていない、負けたのは心理戦だった」と述べていました。
ワシントンポスト紙が政府の機密報告書をもとに行った調査によると、アフガニスタン政府には35万2,000人の軍人・警察官がいることになっているが、実際には25万4,000人しかいなかったといいます。
アフガニスタン軍の幹部たちが、実際には居ない10万人分の給与を掠め取っていました。
アフガニスタン政府高官は、政府軍について、「戦闘に適しておらず、休眠状態で、訓練が不十分で、腐敗しており、しばしば持ち場を離れている。」と述べています。
米海軍士官のトーマス・ジョンソン氏は、「アフガニスタンの人々は警察を盗賊と見なしており、最も嫌われている組織である。」と述べています。
ノルウェーの匿名の士官は、アフガニスタンの警察官の30%が部隊から逃げ出し、政府支給の銃を持ち逃げしていると語っています。
ライアン・クロッカー前駐アフガニスタン大使は、アフガニスタン警察の衰退は、銃や人の不足ではなく、「骨の髄までの腐敗」と「治安維持の任務遂行能力の欠如」によるものだと述べています。
過去にアフガニスタン軍を支援した軍事アドバイザーのビクター・グラビアーノ氏は、アフガニスタン兵は規律がなく、米国が支援した装備品を「盗む」「転売する」愚か者であると述べています。
アフガニスタン内務省の元顧問シャハマード・ミアケル氏は、かつて地元の長老に、「500人の政府軍が20人や30人のタリバンと戦えないのはなぜだ?」と尋ねたそうです。
長老から帰ってきた答えは、「政府軍は国民を守りタリバンと戦うために来たのではなく、銃や燃料を売ってお金を稼ぐために来たからだ」だったそうです。
ある米軍将校は、アフガニスタンの地方警察の1/3は麻薬の売人で、米軍部隊から燃料をもらって売ってお金にしようと日々を過ごしていると語っています。
普段アフガニスタンのことは、日本で報じられることはありませんが、アフガニスタン政府の腐敗はひどい物だったようです。
これでは戦わずして敗れ、崩壊していくのは当然です。
米国がアフガニスタンに駐留して20年間になりますが、全くの時間とお金の無駄だったということです。
アフガニスタンは再びタリバンが支配しますが、2001年当時と大きく違うのは、隣国の中国が世界第2位の経済大国になっていることです。
廃れかけた一帯一路のテコ入れに、アフガニスタンを多いに利用するでしょうし、中印国境紛争に与える影響にも注目です。
台湾、南シナ海だけでなく、中央アジアもホットになってきました。中国のあるところ火種ありです。
[あわせて読みたい記事]
参考記事
<中央通訊社>美国20年训练、提供武器 阿富汗政府军为何不敌塔利班
http*://bit.ly/37ISBhI