黄大仙の blog

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「中絶合憲」覆した米最高裁判断に中国の批判が集中 しかし中国女性の生殖の権利は保障されているのか?

米国最高裁24日に、長年、女性の人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた「ロー対ウェイド判決」を覆し、米国社会を揺るがしました。この動きは中国でも激しい議論を巻き起こし、米国が人権に関して後退していると批判する声さえ出ています。

  米国議会の出資によって設立された短波ラジオの自由亜州電台の記事より。

 

  中絶の権利に関する米国最高裁による判決を受け、中国公式メディア環球時報の元編集長の胡錫進は、「中絶禁止法は望まない妊娠をした多くの女性を苦しめ、結果として困難な人生に直面させる。人権擁護の立場から注目される米国での変化であり、悲しいことだ」とTwitterで批判しました。 

中絶の合憲性を認めていた判例を覆した米国最高裁判決を喜ぶ人たち

  さらに、中国外交部の華春瑩報道官は、「胎児の権利を守ることは必要だと信じているが、学校での子供の射殺は容認している」と、米国で多発する銃乱射事件を引き合いに、米国を皮肉るツイートをしています。

 

  また、SNS上では、「米国最高裁の判決が女性の権利を守っていない」と主張したり、「米国のいわゆる人権もおかしいものが多い」と批判している人もいます。

 

  また、米国の最高裁判決が女性の人権を守っていないと考え、「米国のいわゆる人権も馬鹿げたものが多い」、「『人権を叫びながら人権を踏みにじる』という偽善を再び露呈した」と批判する人もいます。

 

  それでは、中国女性の中絶の権利についてはどうでしょうか? 中国の女性は本当にアメリカより中絶の自主性があるのでしょうか?

 

  米国の人権団体「中国婦権」の創設者である張菁氏は、中国と米国を同じ尺度で比較することはできないとしたうえで、「中国女性の子宮の(所有権は)共産党に管理されており、議論の余地はない。 この点はアメリカと本当にレベルが違いますね。」と述べています。

 

  家族計画は長年にわたり中華人民共和国の、基本的な国家政策です。

 

  憲法には、「国家は、人口の増加が経済及び社会の発展計画に沿うように、家族計画を推進しなければならない」(憲法25)、「夫婦ともに家族計画を実践する義務がある」(憲法49)とあります。

 

  しかし、中国の計画生育政策は米国のように法規制があるわけではなく、張菁氏は、「中国政府の家族計画は一人っ子から三人子まで、党がすべてを決めている」と述べています。

 

  張菁氏は、「長年にわたる家族計画の強制のように、共産党に言われれば産んでも良く、自分の状況は関係ない。共産党が決めたことであれば、産むべきは産んでもいい、産むべきでないは産まない」と述べています。

 

  中国当局は今年初めに「2022年中国家族計画協会の仕事の要点」を発表し、「未婚者の中絶に介入する特別行動を実施する」必要性と「未婚女性が中絶を希望する場合は正式な許可を得る必要がある」ことに言及しました。

 

  昨年9月、中国国務院は「中国女性発展計画(2021-2030)」を発表し、女性の生殖の権利を改善し、「医学的に必要ない」中絶を減らすよう求めています。

 

  中国国家衛生委員会が発表したデータによると、中国における中絶件数は2017年から年々増加しており、2019年の中絶件数は976.2万件で、2018年と比較して0.23%増加しています。

 

  また、雑誌『中国実用婦科与産科』の2021年の論文によると、中国における中絶件数は過去5年間、年間950万件前後で推移しているそうです。

 

  しかし、「医療上必要でない」中絶の削減は、3人子政策に対応するための政府の「押しつけ」であるとの非難を受けています。

 

   ミシガン大学の女性学・ジェンダー学・歴史学の王政名誉教授は、「過去数十年間、中国の女性は一人っ子政策のために中絶をすることができましたが、同時に多くの女性、特に農村部の女性が中絶を強制され、これらの女性の心身の健康を害することになりました。」と述べています。

 

  王政名誉教授は、また、「一人っ子政策の結果、中国の高齢化は急速に進んでおり、近年、中国政府は子供の増加を要求し始め、地方政府に対して、子供3人という目標を行政命令として提案し、実行に移している」と指摘しています。

 

  王政名誉教授は、さらに、「中国の女性は今でも権力者によって国益の名の下に子供を産むか中絶するかの政策が押し付けられ、政府の行政手段によって実行されている。 三人子政策のもと、今では中絶すら許されないところが多くなっている。」と述べています。

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  日本ではあまり話題になりませんでしたが、米国最高裁の判決後に起きている人工妊娠中絶についての議論は、米中でそれぞれ、しばらく続きそうです。


 

参考記事

<自由亜州電台>美堕胎权裁决引中国批 中国妇女的生育权有保障吗?

http*://bit.ly/3NvcbQY