10月17日に承認された中華人民共和国輸出管理法は、12月1日から施行されます。条文には明記していませんが、米中の技術論争の激化に伴い、米国への対抗処置をとるための根拠となる法律であることは明らかで、輸出管理法の施行に危惧する記事や、解説する記事が出始めています。
新華社の報道では、輸出管理法により中国の輸出管理業務がよりよく促進され、中国の国家安全保障と利益が守られることを意味するとしています。
輸出管理法では、中国の国家安全保障及び利益を害するために輸出管理措置を濫用した国又は地域がある場合、中国は、実情に照らして、その国又は地域に対して互恵的措置を講じることができると規定しており、明記はしていないものの米国を強く意識していることは明らかでしょう。
2020年12月1日に施行される同法は5章49条で構成され、いくつか危惧される点が指摘されています。
第二条には『本法における「輸出管理」とは、中華人⺠共和国の領域から外国への管 理品目の移転、及び中華人⺠共和国の国⺠、法人及び非法人組織による 外国の組織及び個人への管理品目の供給を禁止又は制限するために国がとった措置をいう。 』とあります。
これが企業内での中国人から外国人への技術情報の提供や共有も規制対象に含まれるのか明確にされていません。
もし含まれるとすれば、例えば日本企業の中国支社や中国法人に、日本人が滞在していた場合に、現地中国人と日本人駐在員との間で情報のやり取りをする場合にも許可を得なくてはならないことになり、企業活動そのものが疎外されてしまいます。
第四十五条には、『保税区、輸出加工区及びその他の特別税関監督区、輸出監 督倉庫、保税物流センター及びその他の保税監督場所からの規制品目の 通過、積み替え、輸送、再輸出又は輸出は、この法律の関連規定に従っ て実施されなければならない。 』となっています。
再輸出が対象となっていますが、これは中国で生産さ加工された部品を、日本で組み込んだ製品を輸出するときにも、中国政府の許可が必要と解釈できます。
第四十四条には、『中華人⺠共和国以外の組織または個人が、本法の関連輸出 管理規定に違反し、中華人⺠共和国の国家安全保障と利益を危険にさら し、または不拡散などの国際的義務の履行を妨げる場合は、法に基づい て処理し、法的責任を負う。』とあります。
これがこの法律の最も理不尽な条文で、域外適用条項です。条文を素直に解釈すると、中国外の組織や個人が違反したら法的責任を負うとわけですが、中国内での違反行為とは書いていないこと、つまり中国がいでの違反行為でも法的責任を負うと解釈できることが問題です。
極端な話では、日本人が日本で輸出管理法に違反した場合、例えば中国政府の許可なく中国人から技術情報を聞いた場合も違反に問われます。(中国人が会社の同僚であっても許可がなければ違反です)
香港国家安全維持法でも域外適用が話題になりましたが、この法律にも同じ罠が仕掛けられています。
12月1日から施行される中国の輸出管理法ですが、各国や各機関での理解が進むにつれて、まだまだ注意しなくてはいけない項目が明らかになっていくのでしょう。
この法律は「外国人は中国とは付き合うな」と言っているように感じてしまいます。企業の中国離れが進みそうです。
新華社から発表された輸出管理法全文です。
機械翻訳も併記しましたのでご参考まで。
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参考資料 *>s
http*://bit.ly/35e3d6T
<徳国之声>出口管制立法 中国反制“有理”
http*://bit.ly/3m2KPV7
中国輸出管理法| 安全保障貿易情報センター(CISTEC)
http*://bit.ly/2HiRP1k