第93回アカデミー賞では、『ノマドランド』が作品賞、監督賞、主演女優賞の3部門を受賞し、監督の中国系アメリカ人監督のクロエ·ジャオ(趙婷 Chloe Zhao)には、英米やアジア各国のメディアが祝福の声を送りましたが、出身地中国のメディアはほとんど報じませんでした。
第93回アカデミー賞で3部門を受賞した『ノマドランド』は、家族を失い車上生活を送る60代女性の生き様を描いた映画で、中国系アメリカ人女性のクロエ·ジャオ(趙婷 Chloe Zhao)が監督を務めました。
日本、シンガポール、韓国などアジアの主要メディアが称賛する中で、中国では「Chloe Zhao」はもちろん本名の「趙婷」さえも、メディアやネットでほとんど見ることができません。
アカデミー賞授賞式は、中国本土のどのメディアや動画プラットフォームでも生中継されませんでした。
微博(中国版 Twitter)では、韓国女優ユン·ユイジョンが助演女優賞を受賞した『ミナリ』の方が人気があったほどです。
WeChatでも、アカデミー賞に関する映画関連の投稿はほとんどなく、「Chloe Zhao」や「趙婷」で検索しても、せいぜい1ヶ月前の記事がヒットするだけの状況でした。
中国の有名な映画評論家「木衛二」氏は、WeChatに「何も言うことはない。受賞者のリストについて話したい、 しかし、...... あなたにもわかるでしょう。 でもまあ、実際にはまだその映画を見ていないんですけどね。 いつか彼女の映画を映画館で見られることを願っています。」と意味深に投稿しました。
一部の欧米メディアは「中国メディアの冷たい沈黙」お表現していましたが、クロエ·ジャオのオスカー受賞に関して百度(バイドゥー)検索しても、検索できるのはクロエ·ジャオの継母であり、中国大陸の女優の宋丹丹が「あなたは私たち家族の伝説です」と讃える言葉だけでした。
中国本土で今年のアカデミー賞の注目度が低い理由に一つは、香港の「民主化」運動を描いたドキュメンタリー『Do Not Split』が長編ドキュメンタリー賞にノミネートされていることも関係していると思われます。
実際に今年は香港のメディアがアカデミー賞を生中継していません。これは52年ぶりのことですが、例年、授賞式を中継している香港のメディア「TVB」は、「純粋に商業的な配慮」だとしています。
それでは、クロエ·ジャオ監督は、香港ドキュメンタリーのとばっちりを受けただけなのでしょうか?
『ノマドランド』とクロエ·ジャオ監督は、今年3月にゴールデングローブ賞を受賞しています。この時は趙婷(クロエ·ジャオの本名)の名前が中国大陸で大きく報道されました。
この時中国メディアは趙婷(クロエ·ジャオ)は中国人だと報じていましたが、あるネットユーザーが、2013年に映画雑誌に掲載された彼女のインタビュー記事で、彼女がアメリカ国籍に変更していると述べているのを発見しました。
さらに趙婷(クロエ·ジャオ)が雑誌で、「私が中国にいた10代の頃は、受け取った物は全て偽物だと感じており、この国は嘘だらけの場所であり、真実を聞くことはない」と述べているのが発見されました。
10代の頃の趙婷(クロエ·ジャオ)には、本当にそのように感じたのかもしれませんが、多くのネットユーザーからは中国を侮辱していると怒りを買ってしまいました。
そして、中国人の怒りが冷めやらぬ4月26日に、趙婷がアカデミー賞を受賞しても、中国人の関心を集めることにはなりませんでした。
これが中国系女性監督がアカデミー賞を受賞したのに、出身国の中国でほとんど話題にならなかった理由のようです。
趙婷(クロエ·ジャオ)の弁護をしておくと、彼女は中国社会に焦点を当てたのであって、中国政府や中国人を非難しているのではないだろうということです。
「ノマドランド」は日本でも絶賛上映中ですので、GW中にでもコロナ対策をしっかりして観に行きたいですね。
参考記事
<多維新聞>舆论场|赵婷征服奥斯卡 却被中国“放逐”
http*://bit.ly/3nu0O0E
<腾讯网>刚夸完就翻车?赵婷获最佳导演奖后被爆辱华,事后火速改简介
http*://bit.ly/3xu7ct4