米国議員は、米国オリンピック関係者に対し、北京冬季五輪で米国選手が中国での人権侵害について発言した場合、それを理由に中国政府から制裁を受ける可能性があると指摘し、選手を守るための備えをするよう要求しました。
ドイツ国営の国際放送メディアである徳国之声の記事より。
米国民主党のジェフ・マークレー上院議員とジェームズ・マクガバン下院議員は、米国オリンピック委員会（USOC）に対して公開書簡を提出しました。
公開書簡では、中国側当局者の発言を引用し、オリンピックにおける言論の自由とデータプライバシーへのリスクは、対処すべき緊急課題であると強調しています。
『中国側当局者の発言』とは、北京冬季オリンピック組織委員会対外連絡部の楊舒副部長のものです。
1月初に楊舒副部長は、「五輪の精神に沿った言動は保護されると考えられるが、中国の法律に反する行動や言動は処罰の対象になる」と述べています。
マークレー上院議員とマクガバン下院議員は、「中国当局は、政治的または思想的な理由で、米国市民を含む外国人に出国禁止を課したり、投獄したりすることさえある」と指摘しています。
両議員は、「USOCはIOCや各国五輪委員会、米国務省と継続的に連携し、選手たちが表現の自由のために（中国から）処罰されたときに、選手たちを保護するための手段を講じるべきだ」と述べています。
マークレー上院議員は現在、米国下院の中国委員会（CECC）の委員長であり、マクガバン下院議員は同委員会の共同委員長を務めています。
CECCは、米国上下院の国会議員や政府のメンバーで構成され、中国の人権状況や法治の発展を監視するために2001年に設置された独立委員会で、大統領と議会に年次報告書を提出しています。
CECCは2週間前にIOCに書簡を送り、北京冬季五輪のユニフォームの生産に強制労働が関わっている懸念を表明しました。
北京冬季五輪のユニフォーム契約が、新疆ウイグル自治区産の綿花を使用する安踏体育用品や恒源祥と結ばれているため、CECCはIOCへの書簡の中で、「新疆ウイグル自治区で生産された綿花は、強制労働と抑圧の代名詞である」と指摘し、両企業がIOCに提出した原産地証明書」の公開を要求しました。
NGOの『人権観察』は1月18日に開催したのセミナーで、北京冬季五輪に出場する選手に対し、五輪期間中の身の安全のため、中国の人権問題についてコメントしないよう警告を発しています。
五輪憲章第50条によると、五輪の会場、アリーナ、その他のエリアでは、いかなる種類のデモや政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許されないとされています。
『人権観察』の中国研究者である王亜秋氏は、「中国の法律は、言論を訴追するための犯罪について非常に曖昧模糊としており、 人々は挑発行為で告発される可能性があり、中国政府は平和的な批判に対しても幅広い犯罪を適用することができます。」と述べています。
国際的なアスリートの支援団体『グローバル・アスリート』の事務局長であるロブ・コーラー氏は、アスリートが受けられる保護は本当に少ないと考えており、「五輪期間中は発言せず、帰国するまで我慢するように」とに呼びかけています。
このような批判に対して、中国の官製メディア《中国日报》は、米国の「反中国勢力」が北京冬季五輪を妨害し、スポーツを政治化しようとしていると避難する記事を掲載しました。
《中国日报》は匿名情報筋からの情報として、「米国政府は各国の選手が中国への不満を表明し、否定的な言動をし、さらには大会への参加を拒否するよう扇動する計画に取り組んでいる」と述べています。
この件について北京の米国大使館報道官は、「冬季オリンピックへの参加に反対する国際的な協調運動が行われたことはない」と述べ、「アスリートには五輪精神と憲章に則り、自由に自己表現する権利がある」と指摘しています。
欧米では北京五輪に参加するアスリートや関係者に対して、個人のスマホやパソコンを持ち込まないように警告していますが、日本選手団に対してはどうなんでしょう？
政治的な発言をする日本人アスリートはいないとは思いますが、いつの間にか消息不明となる関係者が出ないことを祈ります。
参考記事
<徳国之声>美议员：政府应保护敢于直言的冬奥选手
http*://bit.ly/3IRCfnM
