長年の一人っ子政策により、近年、高齢化が進む中国では、高齢者の復職を積極的に推進し始めていますが、この政策はすでに落ち込んでいる若者の雇用機会をさらに圧迫することになると懸念されています。
米国議会の出資によって設立された短波ラジオ放送局の自由亜州電台の記事より。
中国の官製メディア『労働新聞』は、中国の高齢化に対応するため、政府は50代、60代の「低年齢老人」に定年後の職場復帰を促し、幸福感の上に安心感を得られるようにすると報じました。
これこそが、「老有所養(老人が扶養を受けたり休養できるようになる.)」の上に「老有所為(年寄りにも何かなすことがある)」を実現する唯一の方法だとしています。
「老有所養」は年金やサービスの提供を通じて高齢者の過去の貢献に報いることであり、「老有所為」は高齢者が過去の経験の活かして社会に貢献することを奨励することです。
中国政府がこの政策を推し進めるのは、政府年金の格差拡大を緩和するためなのかどうか、疑問の声が上がっています。
『中国デジタル・タイムズ』は、「統計によると、2021年の中国の60歳以上の高齢者は2億6700万人で、国の総人口の18.9%に相当し、政府の年金不足は7000億元(約14兆円)以上になる」と指摘しています。
米国に拠点を置くNGO「チャイナ・ラバー・ウォッチ」の李強代表(李強新首相と同姓同名の別人)は、中国当局が「低年齢老人」向けの雇用を導入する狙いは年金問題の解決にあるとし、「年金格差は非常に大きく、年金の不足が非常に大きいので、定年を延長して、すでに定年間近の人が労働市場に再就職できるようにする必要がある」と語っています。
李強代表は、最近の物価上昇で、政府から支給される年金が実質縮小しているため、高齢者の再就職促進は、高齢者の経済的圧迫を緩和する目的もあると付け加えました。
李強代表は、政府の高齢者雇用促進は、年金の問題とは別に、失業中の若者を安価に労働集約型産業に押し込む目的もあると指摘しています。
しかし、李強代表は、中国の若年層の失業率が深刻なのは、大学を卒業した若者が高級産業で働くことを望んでいるからであり、高齢者に仕事を続けさせ、こうした若者の就業機会を奪うことは、むしろ、若者の就職難を悪化させるだろうと指摘しました。
中国のネット民たちも、年金不足を補うために「低年齢老人」を再び働かせようとする政府の動きを否定的にとらえています。あるネット民は「年金をもらっていない中年を餓死させ、年金をもらっている老人を過労死させるためだ」「35歳から40歳の若い人たちにチャンスを与えよう」と皮肉交じりにつぶやいています。
海外の民主化出版「北京の春」の名誉編集長である胡平氏によると、国際的な傾向として、どの国も高齢者の定年を延長しており、「豊かになり始めれば、高齢化と少子化が問題になり、年金が大きく不足し、みんな定年を延ばしている。その限りでは、中国政府がやっていることはごく普通である」と述べています。
しかし、胡平氏は、一人っ子政策が、中国の高齢化問題を特に深刻にし、緊急の課題にしているとも指摘し、「たとえ高齢者の就労を促すことで年金不足を解消できたとしても、高齢者が労働力に戻ることで、若者が就きたくとも空きがない非労働力の仕事に就く可能性が高い」と述べています。
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日本以上のスピードで進む中国の高齢化は、日本よりもはるかに貧弱な年金を直撃し、引退した高齢者の再就職を奨励し始めました。次の一手は年金の減額が予想されます。
すでに健康保険給付額が減らされて「白髪運動」と呼ばれる高齢者の暴動が起きていますが、年金が減ったら「白髪革命」が起こりかねません。
https://deepredrose.hatenablog.com/entry/2023/02/20/120000
参考記事
<自由亜州電台>中国养老金不足 鼓励”重返职场"要老年人自救?