新型コロナ流行と露・ウクライナ戦争での異常な物価高騰の後、世界中の電気自動車は今、スケール効果とテスラの値下げに煽られ、本格的な価格戦争に陥っています。その中でドイツの自動車メーカーは健闘していますが、テスラと中国市場からの二重の価格圧力に立ち向かわなくてはいけません。
ドイツ国営の国際放送事業体である徳国之声の記事より。
ドイツ連邦運輸局が発表した最新のデータによると、今年上半期のドイツの電気自動車市場でナンバーワンの自動車ブランドはやはりテスラで、3万6000台以上の電気自動車が販売されました。
しかし、そのすぐ後ろに続くドイツの古豪自動車メーカー、フォルクスワーゲンがテスラとの距離を縮めています。
フォルクスワーゲンVWは単一ブランドとして、今年1月から6月の間に約3万4000台のEV車を販売し、テスラに僅差に迫っています。
しかし、アウディ、シュコダ・オート、セアト、ポルシェを含むフォルクスワーゲン・グループの他のブランドを含めると、フォルクスワーゲン・グループは依然としてドイツの電気自動車市場のトップに君臨しています。
フォルクスワーゲンのほかにも、BMWやメルセデス・ベンツなど、ドイツの自動車メーカーは今年上半期、電気自動車の販売台数を前年同期比で伸ばしています。
しかし、昨年下半期と比較すると、メルセデスのEVモデルEクラスを除くドイツ市場の上位5ブランドの販売台数は減少しました。
その主な理由は、ドイツ政府が今年1月1日から電気自動車市場に対する補助金を削減したからです。
消費者が直接享受できる購入補助金は6,000ユーロ(約93万円)から4,500ユーロ(約70万円)に減額されたため、昨年後半のドイツの電気自動車市場は駆け込み需要の波が最高潮に達しました。
いまでは、この特需の高潮は急速に引いています。テスラは現在、販売台数よりも生産台数の方が多く、ドイツの自動車メーカーが現在出荷している新車の大部分は、ドイツ政府が電気自動車への補助金を削減しなかった時期に受注したものです。
ドイツ自動車業界の専門家であるフェルディナント・ドゥーデンヘッファーは、今年後半には販売競争がさらに激化し、EVの価格が大幅に下がる可能性が高いと語っています。
ドゥーデンヘッファーは、ドイツのEV市場は見た目よりも弱いことを強調し、「現在我々が目にしているデータは、昨年までの状況を示している。それとは対照的に、今年の受注台数は2022年よりも大幅に減少している」と述べています。
同時に、ドイツの電気自動車市場に参入している他のいくつかのブランドにとっては、状況はさらに悪くなっています。
ドゥーデンヘッファーは、「小型車や低価格の中型車を多く擁するブランドでは、販売台数が大幅に減少しています。これはドイツ連邦運輸局のデータにも反映されています。ルノー、オペル、フィアットは、1年前には好調な販売台数を示していましたが、現在は低迷しています。フォルクスワーゲンは、より多くの値引きを提供することで販売不振を回避できたと考えています」と述べています。
ドゥーデンヘッファーは、続けて、「しかし、これは始まりに過ぎないかもしれない。ヨーロッパの電気自動車市場では激しい価格競争が予想される」と述べました。
EVの生産・販売大国である中国では、これまでにない自動車の価格競争が本格化しています。今年1月にテスラが主力車種「モデル3」と「モデルY」の大幅値下げを発表した後、BYDや東風など40社以上の自動車会社が追随し価格戦争が勃発しています。
そして今、この価格競争は欧州にも波及する傾向にあります。まず、業界のリーダーであるテスラは、生産の各段階で厳格なコスト管理を行っているため、2022年でも粗利益率は約26%もあります。
ほとんどの新興EVメーカーがまだ全体として赤字を出している市場において、テスラにはまだ値下げ余地があるのです。
そのため、他の中国EVメーカーは大幅な値下げを余儀なくされています。
ニオ、BYD、Lynk & Co、MG、東風などの中国EVブランドが欧州市場を押さえる中、中国の価格戦争が欧州市場に影響を及ぼすという流れがすでに生まれています。
例えば、中国の自動車メーカーが買収した英国ブランドのMG4は、現在ドイツでは補助金前の価格が32,300ユーロからとなっており、フォルクスワーゲンID.3より7,700ユーロ安く、価格差は20%近くあります。
さらに、東風汽車を含む中国の自動車メーカーは、スペインを含む南欧市場を占拠し始めており、現地の消費水準に応じて、1万ユーロから2万ユーロの間でさまざまな低価格のEVモデルを発売しています。
中国製EVの価格優位性は、ドイツメディアの報道によると、中国市場でのID.3の価格は約15,800~18,900ユーロにすぎません。ドイツにおけるID.3の現在の販売開始価格は、補助金控除後でも約35,500ユーロもあり、これは中国での価格の2倍以上です。
このギャップの理由は、一方では欧州と中国で電気自動車の安全要件が異なるためであり、他方では中国の自動車メーカーが時間、モデル、台数を限って値下げしているためであり、車の生産地域もドイツと中国に分かれているためです。
EVが今後も値下げを続ける傾向はすでに明らかであり、ドゥーデンホーファーは、「テスラはまだ5~10%の値下げ余地があると予想しており、テスラの今後の値下げは、他の自動車メーカーの価格の方向性をも左右するだろう」と述べています。
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EVに値下げラッシュがきているようです。中国を筆頭に、雨後の筍のように乱立しているEVメーカーにも淘汰の波が押し寄せるのかもしれません。
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参考記事
<徳国之声>德国电动车:中国和特斯拉的双重压力