台湾の国防部は、中国の偵察気球とみられる物体は台湾付近では目撃されていないと明らかにしました。「台湾上空に所属不明の気球が「極めて頻繁に飛んで来ている」との英経済紙フィナンシャル・タイムズの報道を否定したことになります。
ドイツ国営の国際放送事業体である徳国之声の記事より。
2月13日、英フィナンシャル・タイムズ紙は台湾の高官を引用して、ここ数年、数十機の中国の軍事用気球が台湾の領空に漂着し、「最近ではつい数週間前に、平均して月に一度は発生している」と報じていました。
翌2月14日、台湾国防部情報処の黄文启少将は定例記者会見で、「台湾海峡周辺空域に現れる気球の大半は気象調査用で、小型軽量で、一定の高度に達すると自力で破裂する。これらの気球のほとんどは台湾の沖合にあり、台湾上空には上がらない 」と述べました。
黄文启少将は、「気球が国家の安全や生活に脅威を与える場合、処分することになる。 しかし今のところ、武力で破壊しなければならないような目標に遭遇していない。」と述べました。
台湾国防部の関係者は、『中国軍の数十機の軍事用気球が台湾の領空に飛行している』ことについてはコメントしませんでしたが、「台湾海峡周辺で気球が射程内に入るたびに、台湾軍が情報を得ることになる」と述べています。
米国メディアは2月8日に、中国が5大陸40カ国以上を監視する 『気球艦隊』を保有していると報じています。 米国政府はこの報道を確認し、国防総省は、撃墜された気球は中国が主張するような『民間』の気球ではないことを『100%確信している』と述べました。
米軍は2月4日にサウスカロライナ州沖で中国の気球を撃墜した後、この1週間でアラスカ沖、カナダ北部、ミシガン州ヒューロン湖上空でさらに3個の未確認飛行物体を撃墜していますが、 米国とカナダは、3個の飛行物体の性質と起源について、まだ詳しい情報を発表していません。
中国政府は、サウスカロライナ州沖で墜落された気球は気象調査に使用されていた民間気球で、誤って制御不能になり、米国領空に飛来したと発表しています。
中国外交部の汪文斌報道官は2月13日に、米国の「気球」が他国の領空に不法に侵入することは「珍しいことではない」と批判しました。「昨年以来だけでも、米国の高高度気球は、中国の関係当局の承認なしに10回以上、中国の領空を違法に飛行している」
この主張に対して、米国国家安全保障会議の広報担当者であるエイドリアン・ワトソンは、「米国政府が中華人民共和国上空に監視気球を打ち上げたという主張はすべて虚偽だ」と否定しています。
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台湾国防部が中国気球の領空侵入を否定しているのは、認めてしまうと、国内外から『なぜ撃墜しなかった?』と非難されるのが怖かったからでしょう(勝手な憶測ですが)。
高高度をゆっくりと飛行する気球を撃墜するのは、素人が考えるよりもかなり難しいのだそうです。
高高度気球が飛行していたのは地上1万8000mですが、航空機の最高飛行高度の1万2000mよりもはるかに高く、戦闘機の機銃で狙うのはとても難しく、しかも高速の戦闘機からゆっくり飛行する気球を狙う難しさも加わります。(新幹線から地上を走る自転車に乗った標的を狙うようなものだそうです。)
米軍はサイドワインダー空対空ミサイルを使って撃墜しましたが、予算豊富な米軍だからできることで、台湾軍が地対空ミサイルや短距離弾道ミサイルを使うのはコスパが悪すぎます。外れたら目も当てられません。
同じ意味で自衛隊でも、高高度気球を撃ち落とすのは困難だと見る有識者は多いようです。
高出力レーザーかレールガンを開発するしかなさそうですね。
参考記事
<徳国之声>台湾国防部否认有中国侦察气球进入其领空