世界中で60カ国以上が採用し、ASEAN諸国もほとんどが採用する中国製ワクチンですが、ベトナムだけは欧米やロシア製ワクチンを採用し、中国製ワクチンを拒否しています。
ベトナムのホーチミン市保健局は、市民のワクチン接種のニーズに応えるために、米国モデルナから500万回分のワクチンを購入する提案書を、ホーチミン市人民委員会に提出しました。
ベトナムは2月24日にアストロゼネカ製ワクチン11万7千回分を受け取り、2月26日にはロシア製ワクチンのスプートニクVを承認し、1億5千回分のロシア製ワクチンを投与する予定と言われています。
また、ベトナムはWHO主導でワクチンを共同購入し公平にする活動であるCOVAXから、3000万回分のワクチンを供給されることになっています。
このようにベトナムは欧米やロシアから大量のワクチンを輸入することになっていますが、中国製ワクチンを採用しないASEAN唯一の国家となっています。
中国は世界中の60カ国以上にワクチンを提供しており、ASEAN諸国ではフィリピン、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ブルネイが中国からワクチン援助を受け、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシアは中国製ワクチンを購入していますが、ベトナムだけは中国製ワクチンではなく、欧米やロシアのワクチンを採用しています。
ブルネイでのワクチン授与式
ベトナム以外のASEAN諸国も、欧米やロシアのワクチンを手配していますが、中国製ワクチンを全く採用しないのはベトナムだけです。
なぜベトナムは中国製を採用しないのでしょうか?
一つ目の理由には、ベトナムは中国製ワクチンに警戒心を持っていることが挙げられます。
過去のワクチン開発では中国は無名の存在で、新型コロナウイルスの流行によって初めて中国はワクチンを世界に供給することになりました。
そのため、「ワクチン界のニュープレーヤー 」である中国製ワクチンの安全性や有効性については、懸念や疑念が持たれており、ベトナムも例外ではなく、欧米のワクチンを優先しています。
二つ目は、世界的なパンデミックにより、ワクチンは医療の域を超えて政治的な意味合いを持ち始めています。中国は世界中でワクチン外交を展開し、インドがそれに対抗して南アジアでワクチン外交を繰り広げていることも数値の事実です。
ベトナムは中国との間でデリケートな南シナ海問題を抱えており、中国製ワクチンを採用することで、「中国支持」と看做されて中国ワクチン外交の渦中に巻き込まれることを避けようと配慮しています。
三つ目の理由は、ベトナムが中国に追従しているという印象を外部に与えたくないということです。
ベトナムは歴史的に中華王朝の影響を受けており、近年に入っても、反腐敗や改革開放などの分野で中国共産党から学んでいますが、同時に中国の下僕にはなりたくないと考えています。
ベトナムはこの1年ほどで疫病対策に優れた成果を上げ、2020年には東南アジアで唯一プラスの経済成長を達成しています。
さらに長期的には2045年までに高所得先進国になることを目指しています。
ベトナムのような国威発揚の強い国は、何でもかんでも中国に頼ろうとはしないでしょう。 拒否することは、むしろ当然のことかもしれません。
今後、欧米ワクチンの供給が滞った場合には、ベトナムが中国製を使用する可能性は残されてはいますが、現状はベトナムにはベトナムの意思と考慮があるようです。
日本も中国製ワクチンを採用していない数少ない国の一つですが、立憲民主党の衆院議員が国会質問で中国製ワクチン採用を訴えるなど、中国製採用への動きも見せ始めています。
IOCのバッハ会長が、東京五輪参加関係者への中国製ワクチン接種を前向きに進めようとしており、中国ワクチン外交は世界中に及んでいるようです。
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参考記事
<自由亜州電台>越南大批采用西方和俄罗斯疫苗 独不用中国疫苗
http*://bit.ly/2OICP0l
<多維新聞>越南為何是東協中唯一未選擇中國疫苗的國家
http*://bit.ly/3lgbTBa