黄大仙の blog

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新型コロナから台山原発まで、中国の危機管理が再び批判される それでも世界は信頼しない

中国の広東省にある台山原子力発電所CNNによって「放射性物質の脅威が迫っている」と暴露されたことで、中国政府の危機管理対応があらためて問われることになりました。「事故」は5月下旬に起きていましたが、中国当局からの発表は616日のことで、欧米メディアが大々的に報じた後でした。

 

 

  CNN613日、中国の国有企業の中国広核集団公司(CGN)と、フラマトム社(フランスの電力大手EDFの子会社)との合弁会社である台山原子力発電合作公司が、運営する台山原子力発電所で不活性ガスの漏洩が発生したと独占的に報じました。

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建設中の台山原発(2013年)

台山原子力発電所事故の概要

 

  CNNの報道によると、フラマトム社は5月下旬に米国エネルギー省に連絡を取り、台山原子力発電所で問題が発生している可能性を報告し、技術的な支援要請を提出しました。

 

  フラマトム社から米エネルギー省への書簡には、中国国家原子力安全局が台山原子力発電所外の放射線モニタリングの許容範囲を引き上げたことで、原発の強制停止を回避したとの非難が含まれていました。

 

  フラマトム社は6月に再度、原子炉から核分裂に起因する不活性ガスが漏れていることを米国に伝え、フラマトムが事故や緊急安全事態に対応するための米国の技術を中国側と共有することに同意するよう正式に要請しました。

 

  その主な理由は、台山原子力発電所の運営を担う台山原子力発電合作公司の中国側パートナーである中国広核集団公司が、米国の事業体リストに掲載されているからです。

 

  20198月に米国商務省は、中国広東核電集団を、中国の軍事利用のために米国の高度な原子力技術を取得する意図があったとみなす「エンティティリスト」に掲載していました。

 

  CNNの報道を受けて、フラマトム社の親会社であるフランス電力(EDF)も、614日に台山原発1号機に問題があったことを認めています。

 

  EDFは台山原発1号機の主回路で希ガス(キセノンとクリプトン)の濃度が上昇していることを知らされているが、主回路での希ガスの存在は既知の現象であり、原子炉の運転マニュアルに明記されていると説明しています。

 

 

中国側は当初は否定していました。

 

  中国側は当初否定していましたが、616日になって中国生態環境部は、台山原発1号機で燃料棒破損の不具合が発生したことを初めて認めましたが、放射能漏れの発生は否定しました。

 

  「台山原発1号機の放射能レベルの上昇は、主に燃料棒の破損に関連している ...... よくある現象です。」

 

  「台山原発1号機の炉心には6万本以上の燃料棒がありますが、燃料棒の被覆管の破損数は現在のところ5本程度と予測されており、全体に占める破損燃料棒の割合は0.01%以下で、設計で想定している燃料集合体の破損の最大割合(0.25%)を大きく下回っています。」

 

  世界原子力協会(WNA)のジョナサン・コブ博士は、台山原子力発電所の運転状況について、「台山原発で発生した問題は、オペレーション上の問題であり、安全上の問題とは考えられない。」と述べています。

 

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台山原子力発電所1号機

欧米人は中国の情報開示を信頼しない

 

  米国のシンクタンク、ランド·コーポレーションの上級政治学者であるスコット·ハロルド氏は、中国政府が情報や実際の出来事をコントロールすることを過度に重視しているため、外部の人間が中国に対して信頼を築くことが難しくなっていると指摘しています。

 

  「中国にとっての本当の課題は、この出来事に対する中国の対応、あるいはその説明を外国に信用してもらうことだと思います」

 

  「本当に何もなかったのかもしれない。 しかし、残念なことに、中国のシステムでは、情報をコントロールし、物語をコントロールすることに重点が置かれており、何が起こったのかを判断する材料が本当に弱くなっているのです」

 

  新型コロナ感染症の発生当初の隠蔽や、新型コロナウイルス起源の追跡調査など、事故や危機に対する当局の対応は非常に不透明であり、外部の人間は中国政府に対する信頼感を失っています。

 

  2011年の浙江省温州市での高速鉄道(中国新幹線)衝突脱線事故では、救出作業中に脱線車両を埋めてしまい、事故原因の究明も一切されていません。

 

  2008年の四川省の汶川地震では、地方政府の建物は無事だったのにも関わらず、小学校など学校の校舎がことごとく倒壊し、多くの子供が犠牲になったのに、「瓦礫に埋まった人たちがお互いに励まし合って救出を待っていた」という『愛と感動の物語』にすり替えられてしまい、校舎の手抜き工事の疑惑は晴らされないまま終了してしまいました。

 

  最新では、WHO武漢を訪問し、新型コロナの発生の詳細を調査公表しましたが、調査が中国と共同で行われ、中国政府が情報をコントロールしているとして外国から信用されていません。

 

 

  台山原発の事故のように、燃料棒から希ガスが漏れた状態でも原子力発電所の運転を続けることは、1990年代までは世界の多くの地域で行われていたそうです。しかしそれ以後は、放射線の微量放出を最小限に抑えるために世界各国ではそのような運転をしていません。

 

  台山原発放射線基準を変更して運転を続けており、安全よりも発電を重視した結果だと言わざるを得ません。

 

  中国共産党結党100周年の記念大会が71日に迫り、「原発事故」を公表してメンツが潰れるのを避けたのでしょう。さらに、広東省では工場の稼働が週3日と言われるほど、電力不足に陥っているために燃料棒の交換のために原発を停止したくなかったのかもしれません。

 

  普通の国家なら安全の方が優先されますが、共産党のメンツが優先されるのは中国アルアルです。

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原子力発電所の多い国

 

  中国は稼働中の原子力発電所49機、建設中が17機という世界有数の原発大国ですが、台山原発のような事故隠しが他にもあるんじゃないかと疑ってしまうのは、私に考えすぎでしょうか。

 

 

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参考記事

<美國之音>新冠到台山核电厂,中国危机处理再遭诟病

https://bit.ly/3gJa6mo