黄大仙の blog

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盧沙野の旧ソ連国家の主権への疑問が中欧関係を再び "刺激"

盧沙野・駐仏中国大使がテレビのインタビューで旧ソ連国家の主権に疑問を呈してから数日後に、中国外交部の報道官は発言を否定しました。在フランス中国大使館も、盧沙野大使の発言を「個人的見解」とする声明を出し、先に公開されていたインタビュー全文を削除しました。騒動は沈静化しつつあるが、ただでさえ不安定な中欧関係にさらなる「苛立ち」を与えています。

  ドイツ国営の国際放送事業体である徳国之声の記事より。

盧沙野・駐仏中国大使

  盧沙野・駐仏中国大使が421日に旧ソ連諸国の独立国家としての主権に疑義を呈したことは、欧米で広く批判されています。

 

  欧州連合(EU)はこの発言を「受け入れられない」とし、EU加盟国のリトアニアラトビアエストニアは、それぞれの国にいる中国の代理大使を召喚して説明を求めました。

 

  リトアニアのガブリエリュス・ランズベルギス外相は24日、記者団に対し、「われわれはソ連後に出た国ではなく、ソ連に不法占拠されていたのだ」と述べています。

 

  中国外交部の毛寧報道官は24日の定例記者会見で、「中国はソ連後の共和国の主権国家の地位を尊重する」とし、「ソ連崩壊後、中国はいち早く関係国と国交を樹立した国である。 国交樹立以来、中国は常に相互尊重と平等待遇の原則を堅持し、二国間の友好協力関係を発展させてきた」と述べました。

 

  また、盧沙野大使は21日インタビューで、クリミアの帰属問題を取り上げており、「クリミアは初めからロシアのものだった。ソ連時代、フルシチョフがクリミアをウクライナに与えたのだ」と述べています。

 

  盧沙野大使のこの発言に対して、毛寧報道官は、「ウクライナ問題について、中国の立場は明確で一貫しており、国際社会と協力してウクライナ危機の政治解決を促進するために独自の貢献を続ける所存である」と述べるにとどまっています。

 

  在フランス中国大使館の424日と25日の声明はより明確で、「盧沙野大使のウクライナに関する発言は政策声明ではなく、個人的見解の表明であり、過大に解釈されるべきではない」と火消しに躍起になっています。

 

  中国の対応とは対照的に、EUはこの問題を放置するかのような態度をとりました。徳国之声の記者が、「中国のトップがそのような考えを持っているならば、中国はウクライナの平和に信頼できる役割を果たすことができるのか」と質問すると、

 

  ジョセップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表は、「私はそれに関与するつもりはない......。 他の問題もあるかもしれないが、この問題はこれできちんと解明されたと思う」と語っています。

 

  欧州政策研究センターの研究員である胡巍年は、「この事件はすでに不安定だった中欧関係を、さらに不安定にさせた」と述べています。

 

  20213月、EU新疆ウイグル自治区における人権侵害で中国を非難し、新疆政府高官4人と新疆生産建設兵団公安局に対する制裁を発表しました。

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  この直後、中国は欧州の10人の要員と4つの団体に対する制裁を発表し、中欧関係は悪化し、二国間の経済関係強化を目的とした投資協定の承認手続きは凍結されました。

 

  2022年、EUWTOに提訴し、加盟国リトアニアに対する中国の経済的脅し非難しました。中国は脅迫を否定し、リトアニア2021年に首都ビリニュスに台湾の駐在員事務所開設を許可し、その結果リトアニアとの外交関係を低下させたと批判しています。

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  このような背景から、リトアニアは中国と中東欧諸国との関係、いわゆる「171協力」というクラブから脱退しました。

 

  その後、ロシアのウクライナ侵略戦争に対する立場の違いから、欧州と中国の間にはより深い溝が生まれ、2022年にはラトビアエストニアも「17+1協力」から脱退しています。

 

  ジャーマン・マーシャル財団のアンドリュー・スモール上級研究員は、現在の「141協力」は2021年以降、首脳会談が開催されておらず、「事実上ゾンビ」であると指摘しました。

 

  また、スモール上級研究員は、盧沙野大使の今回の発言は、一部のEU加盟国の懸念を「強化」することになると考えており、「 盧沙野大使のコメントの重大性を誇張するつもりはないが、心配なパターンの一部である。盧沙野大使の言葉は、プーチンに対する中国政府内の同調を反映している」と述べています。

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  盧沙野大使の『旧ソ連諸国が主権国家地位を明文化した国際合意はない』との発言は、日本ではあまり大きく報じられていませんし、ほとんどの日本人は無関心だと思いますが、欧州諸国とくに東欧諸国は大きな衝撃を受け、猛反発しています。

 

  中国本国は、『大使の個人的見解』で火消しを図っていますが、たとえ大使であっても、中国共産党と異なる意見を『個人的見解』として発言できるはずもなく、本当に『個人的見解』を喋ったりすれば、とっくに本国に呼び戻されているでしょう。

 

  ここ数年、ウイグル人問題や台湾問題で、欧州諸国が中国に制裁したり、中国の不利になる行動が目立つため、その意趣返しでこのような発言が飛び出したのだろうと思われます。

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参考記事

<徳国之声>卢沙野质疑主权论令中欧关系再受刺激

https://bit.ly/3oDynli