中国国防相の李尚福の失踪は、中国上層部における一連の騒動の中で最新のものであり、世界中で懸念の声が高まり、習近平政権への不安も高まっています。中国当局は国際的な関与よりも国内の安全保障の取り締まりに関心を寄せているようです。
フランス国営ラジオ放送局RFIの記事より。
習近平の外交における混乱が中国外交への懸念を呼び起こしたと英メディアが報じました。外交官やアナリストによれば、予測不可能性が増大しているため、世界第2位の経済大国である中国のリーダーシップに対する他国の信頼が損なわれる可能性があるといいます。
ロイター通信が報じたところによると、8月末に姿を現して以後、中国の李尚福国防部長は軍事調達における汚職で捜査を受けており、公式の場に姿を表していません。
それ以前にも、昨年就任したばかりの秦剛外交部長が7月に公式な説明もなく失脚し、同じ月に中国の核兵器を監督する人民解放軍のエリート部隊であるロケット軍が突然大幅に配置転換されました。
中国人民解放軍の総司令官である習近平が国内に関心を集中させるなか、今月インドで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議に欠席したことで、外国の外交官たちは懸念を抱いています。
不確実性が高まる中、一部の外交官やアナリストは習近平体制の本質を真剣に見直すべきだとさえ訴えています。
元米国防総省幹部で、シンガポール国立大学の研究員を務めるドリュー・トンプソン氏は「はっきりとした評価が必要だ。単にパートナーか競争相手かという問題ではなく、中国は経済的、政治的、軍事的リスクの源になっている。透明性が欠如しているため、中国を巡る信頼の危機に拍車をかけている。」と指摘しています。
ロイター通信によると、中国国防相の失踪と調査について、中国外交部の報道官は記者団に対し、状況は把握していないと語ったといい、中国国務院と国防部はコメントの要請に応じなかったそうです。
3月の就任以来、李尚福国防部長は中国の拡大する軍事外交の顔として、6月の安全保障会議ではアメリカの軍事行動への懸念を表明し、8月にはロシアとベラルーシを訪問しました。
李尚福国防部長は10月に北京で開催される国際安全保障会議で議長を務め、11月にジャカルタで開催される地域国防相会議に人民解放軍を代表して出席する予定でした。
中国の軍部や国家機関には長い間腐敗が浸透していたため、習近平の反腐敗運動は共産党全体の政治的粛清のシグナルだと考えるアナリストや外交官もいます。
ベルリンにあるメルカトル中国研究所の主任アナリスト、ヘレナ・レガルダは、「どのような理由であれ、このようなことが続くかもしれないという予感は、外国が中国側と関わる自信を損なうかもしれない」と述べました。
あるアジアの外交官は、「もし李尚福国防部長の運命が、習近平のますます内向きな懸念を反映しているのだとしたら、中国軍とのより大きな開放性とコミュニケーション・チャンネルを望んでいる我々にとって、良い兆候とは言えない」と述べました。
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李尚福国防部長の動向は公式の発表はありませんが、『汚職容疑』で捜査中という理由は、あまりにももっともすぎるため、却って疑いの目で見られています。
7月には、秦剛前外交部長の突然の更迭、人民解放軍ロケット軍のトップ交代、解放軍の天才科学者の『交通事故死』など、不可解な事象が続いて起きており、『実は、クーデター未遂があったのでは?』などという陰謀論的な憶測まで出ています。
参考記事
<rfi>查李尚福 国际担心习近平政权