中国の全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は6月10日に、「反外国制裁法」を可決しました。この法律は、中国が企業や政府関係者に対する外国の制裁措置に対抗するための強力な法的裏付けと保護措置を提供するもので、中国国内の組織や個人が米国の制裁に協力することを明確に禁止しており、国外追放や資産凍結などの罰則が科せられます。
中国当局は10日夜に反外国制裁法の全文を公開し、国務院の「関連部門」が対中制裁措置の策定·実施に「直接的または間接的に」関与した組織や個人を処罰できると規定しています。
反外国制裁法は全16条からなり、その第3条には「中国は覇権主義と権力政治、およびいかなる国によるいかなる口実と方法による内政干渉にも反対する」と記されており、対立的な色合いを隠していません。
第3条は続けて、「中国を封じ込めたり抑圧したりするためにさまざまな言い訳を用いたり自国の法律に頼ったり、その市民や組織に対して差別的·制限的な措置を講じたり、内政に干渉したりする場合、中国はそれに対応する対抗措置を講じる権利を有する。」としています。
反外国制裁法は、続く第4条、第5条、第6条が最大の目玉で最も重要な項目であり、対象と制裁内容が規定されています。
第4条では、「中国への制裁の策定や実施に直接または間接的に関与している者」を対制裁リストに掲載すると規定しています。
第5条では、第4条の対制裁リストに掲載された個人または組織に加えて、以下の個人または組織にも対抗措置を講じることを決定することができるとしています。
(一)対制裁リストに含まれる個人の配偶者および近親者
(二)対制裁リストに掲載されている組織の上級管理職または実効支配している者
(三)対制裁リストに含まれる個人が上級管理職に就いている組織
(四)対制裁リストに掲載されている個人・団体が実際に支配している、または設立・運営に参加している組織。
第6条では具体的な処罰を規定しており、第4条および第5条に規定された個人および組織に、以下の1つまたは複数の措置を講じることを決定することができるとしています。
(1)ビザの発行拒否、入国拒否、ビザの取り消し、国外追放
(2)わが国の動産・不動産およびその他の種類の財産を差し押さえ、留置し、または凍結すること。
(3)わが国の組織または個人が、彼らとの関連する取引、協力およびその他の活動を行うことを禁止または制限する。
(4)その他必要な措置
制裁内容は概ね米国が中国人や組織に対して行なっている制裁内容と同じであり、反外国制裁法は中国のカウンター制裁行動の法的根拠をより高いレベルに引き上げたものと言えます。
ここ数カ月、米国、カナダ、欧州連合(EU)をはじめとする多くの国が、新疆ウイグル自治区をはじめとする少数民族への迫害や、中国政府と香港政府による香港の民主主義を踏み躙る国家安全法の発動に対応して、中国と香港の政府関係者や団体に制裁を科しています。
中国外交部の汪文斌報道官は10日の定例記者会見で、「反外国制裁法の成立は、中国の主権と核心的利益を守る決意を示すものであり、他国との関係に影響を与えるものではない。中国が法律に基づいて差別的な外国の措置に対抗するために、強力な法的保護と支援を提供するためである。」と述べています。
反外国制裁法に基づいて、中国が強力な報復措置をとれば、欧米との間の緊張関係が高まりかねません。
欧米の制裁に日本企業が同調した場合、中国から報復を受ける可能性がありますが、同調しない場合には米国から制裁を受ける可能性もあり、日本が腹を括って決断する日は近いかもしれません。
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参考記事
<自由亜州電台>反外国制裁法细节公布 外企处境更艰难
http*://bit.ly/2Sutjjp
<多維新聞>西媒:中国反外国制裁法谁会害怕
http*://bit.ly/2RPdiEA
<美國之音>中国通过反外国制裁法 外国驻华企业对黑箱作业深感担忧
http*://bit.ly/3czvXLE
<百度新聞>反外国制裁法全文
http*://bit.ly/3gctCbL
http*://bit.ly/3vnwirC