米国のストリーミングサービス大手のNetflixが配信するドラマシリーズ「Pine Gap」が、南シナ海の主権範囲を示す中国の「九段線」を取り上げ、ベトナムから不満の声が上がったため、ベトナムでの配信を中止しました。
ドイツ国営の国際メディアの徳国之声の記事より。
ベトナム情報メディア省ラジオ·テレビ·電子情報局は、Netflixが6月30日から配信している6話シリーズのドラマ「Pine Gap」を、その内容がベトナムの海洋·島の主権を侵害しているという理由で、削除を要請し、Netflixはベトナムでの「Pine Gap」の配信を中止しました。
「Pine Gap」中の2つのエピソードで、中国が南シナ海の領有権を宣言するために使用している「九段線」の地図が一時的に登場し、ベトナム側は、Netflixが配信した当該シリーズにおけるベトナムの主権に関する虚偽の情報は、ベトナムの法令に対する重大な違反であると指摘されました。
Netflixは、ベトナムで「Pine Gap」の配信を中止したことを認め、「ベトナムの規制当局からの書面による法的要請を受け、現地の法律を遵守するために、ベトナムのNetflixプラットフォームから『Pine Gap』を削除しました。ただし、他の地域の視聴者は引き続き視聴することができます」とコメントしています。
ベトナムラジオ·テレビ·電子情報局は、ウェブサイト上の声明で、Netflixの違反行為はベトナム国民の感情をも傷つけ、一般市民の間に憤りをもたらしていると指摘しています。
この声明では、Netflixがベトナムの領土主権を侵害する内容の映画やテレビ番組をベトナムで配信していたことが、12ヶ月間で今回を含めて3回も発覚したと説明しています。
これまで、2020年7月と8月には、Netflixが配信したドラマシリーズ「Put Your Head On My Shoulder」と「Madam Secretary」が放映され、ベトナムが違法と考える「九段線」のエピソードが紹介されていました。
2019年10月には、米国と中国とが共同制作した映画「Abominable」にも「九段線」の地図が登場し、ベトナム映画庁が同映画をベトナム国内で上映中止する決定を下したこともありました。
九段線とは、南シナ海に中国が勝手に引いた境界線で、周囲を中国、台湾、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、ベトナムに囲まれ、東西905km,南北887km総面積88.6万平方キロメールの広大な領域です。
中国は九段線の内側を全部中国領だと主張していますが、周辺国も隣接する沿岸の領有を主張しており、お互いの主張がぶつかり合っています。
フィリピンは領有をめぐって国連国際仲裁裁判所に訴えたことがあり、2016年7月12日には中国の南シナ海における行動は、国連海洋法条約(UNCLOS)違反であると判断されました。
これに対して中国は猛烈に反発し、以下のコメントを出しました。
「裁定は無効であり、拘束力を持たず、中国は受け入れず、認めないことを厳粛に声明する」
「南海における中国の領土主権と海洋権益はいかなる状況下でも裁定の影響を受けず、中国は裁定に基づくいかなる主張と行動にも反対し、受け入れないものである」
国連国際仲裁裁判所には裁決に対する強制権がなく、当時国が裁決を守らなくても何もできません。勝訴したフィリピンも中国との力の差は歴然としており、抗議活動もあまり力の入ったものではありませんでした。
昨年4月には中国は南シナ海に南沙区、西沙区という行政区の設置を突然発表し、ベトナム外務省が猛烈に抗議し、国際社会も俺を承認していません。
日本のマスコミはほとんど報じませんでしたので、知らない人が多いと思いますが、この時日本政府は、茂木外務大臣が電話で中国の王毅外相に「懸念」を伝えただけでした。
安倍政権末期でしたが、すでに媚中派議員に政権中枢を握られていたのでしょう。
南シナ海は日本の海上輸送の要となっており、ここを中国に牛耳られたら、生殺与奪の権を握られたのに等しく、看過できることではありません。
日本政府や日本人にも、せめてベトナムの半分でもいいので、現状を認識してほしいです。
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参考記事
<徳国之声>片中出现“九段线”地图 Netflix应越南要求撤剧
http*://bit.ly/3yl6m1z
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