洪水災害とデルタ株コロナの蔓延は、下半期の中国の経済成長に大きな影響を与える可能性があります。 多くの経済研究機関が、今年下半期の中国経済の成長率を下方修正しました。
米国政府が運営する国際メディアの美國之音の記事より。
日本の野村證券は8月4日、中国の第3四半期(7~9月期)のGDP成長率を6.4%から5.1%に、第4四半期(10~12月期)を5.3%から4.4%に引き下げました。
また、2021年通年の経済成長率を前回の8.9%から8.2%に下方修正しました。
その理由は、最近中国各地で発生したデルタ株の感染拡大に対して、中国政府が強硬な措置をとったことにあります。
中国では、わずか2週間のうちに感染力の強いデルタ株が、32ある第1級行政区(省·直轄市·自治区)の半分近くで確認されたため、住民に不要不急の旅行を避けるよう呼び掛け、観光地閉鎖や文化イベント中止、旅客便の運休を急いでいます。
野村證券の中国担当チーフエコノミストである陸挺氏は、中国のゼロトレランス(わずかな感染も見逃さない)抗コロナ対策のコストは「ますます高くなっている」と述べています。
中国の政策決定過程に詳しい一部の関係者は、中国がインフラ支出を増やす準備をしていることや、中国の中央銀行が緩やかな緩和策をとる可能性があることを指摘しています。
米国の投資銀行ゴールドマン·サックスのアナリストは、経済緩和策の中心は財政刺激策と国債発行であり、第4四半期には銀行預金準備率の引き下げが行われると予想しています。
7月9日、中国人民銀行が大幅な預金準備率引き下げに踏み切ったことは、市場に驚きを与えました。
中国人民銀行は預金準備率を50bp(ベーシスポイント)引き下げたことで、長期流動性を1兆元(約17兆円)増やしました。
このことは、『新型コロナウイルスの流行が続いているうちは、たとえ世界最大級の経済規模を誇る国でも、政府の経済的てこ入れが必要になる』ということを人々に思い知らせました。
香港のスタンダード·チャータード銀行、ABNアムロ·インターナショナル、OCBC銀行、バンコープ·アセット·マネジメントも最近、中国人民銀行が預金準備率をさらに引き下げる可能性があることを示唆しています。
スタンダード·チャータード銀行の中国経済シニアアナリストである李偉氏は、「2021年に銀行預金準備率を2回引き下げることは、むしろ企業の借入コストを削減し、通貨供給量(M2)と社会融資総量(TSF)のさらなる減少を防ぎ、第4四半期のGDP成長率が前年同期比5%を下回ることを防ぐのに役立つでしょう。」と述べています。
今週ロイターが82の金融機関を対象に行った調査の結果は、李偉氏の見解と一致しており、 回答者の約4分の1は、今後3ヶ月以内に銀行預金準備率が1回引き下げられると予想しており、その他の回答者は、1年物のプライムローン金利と中期貸出金利の両方が引き下げられると予想しています。
デルタ株による新型コロナ感染拡大に加え、河南省やタクラマカン砂漠での大洪水と、人災(天災)に見舞われている中国ですが、独裁国家ならではの強行手段で、災害復旧、コロナ撲滅、経済復興を成し遂げるのでしょうか。
[あわせて読みたい記事]
参考記事
<美國之音>病毒零容忍抗疫政策代价高 中国下半年经济急速放缓
http*://bit.ly/2X33rgN
<Bloomberg>China’s Delta Outbreak Cuts Travel, Prompting GDP Downgrades
http*://bloom.bg/3fwUUsQ
<Reuter>アングル:中国人民銀が預金準備率引き下げ、コロナ対策解除の困難さ反映
http*://bit.ly/3jvldRh