欧州の人々は、台湾海峡での紛争をどのように考えているのでしょうか。欧州のシンクタンクが発表した世論調査によると、EU市民の7割以上が米軍への依存を減らすべきだと考え、6割以上が台湾海峡で米中間の紛争が発生した場合は中立を保ちたいと答えており、マクロン仏大統領が「台湾海峡の紛争に欧州は関与すべきでない」と述べたことと重なります。
ドイツ国営の国際放送事業体である徳国之声の記事より。
欧州外交問題評議会(ECFR)が7日に発表した世論調査によると、欧州人のほぼ4分の3(74%)が米国への軍事的依存を減らし、欧州独自の防衛力を向上させるべきだと回答し、大半が台湾について中立を保つことを望んでいます。
この調査は、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデン、デンマーク、オーストリア、ブルガリアのEU11カ国の計16,168人の回答者を対象に今年4月に実施されました。
調査の結果、「欧州の人々は、EUが外交政策においてより自立し、独自の防衛力を構築することを望んでいる」ということが明らかになりました。
台湾の問題について、もし台湾をめぐる米中間の紛争が勃発した場合、自分の国やヨーロッパがアメリカに味方することを望む回答者は平均で4分の1しかおらず、なんと62%の国民が中立を支持しているとの結果がでています。
スウェーデンやポーランドなど、米国を支持すると答えた人が多い国(約30%)でも、半数近くが中立と回答しました。
EUの43%の人々が中国を「必要なパートナー」と見ており、中国を『敵』『ライバル』と位置づける人(35%)よりも多くなっています。
しかし、ロシアとウクライナの問題では、中国がロシアに弾薬や武器を供給することになれば、自国の経済に深刻な打撃を与えても、対中制裁を支持するEU人が多くなっています(41%対33%)。
中国からの投資については、橋や港湾建設反対65%、テクノロジー企業参入反対52%、自国での新聞社所有反対58%など、欧州に流入する中国マネーに反対する回答者が平均で50%を超えています。
今回の世論調査の結果、欧州の多くの人々は、マクロン仏大統領がこれまで表明してきた米中関係や台湾に関する立場と一致していることが明らかになりました。
マクロン大統領は今年4月、台湾をめぐる米中間の相違など『我々のものではない危機に巻き込まれる』ことが欧州にとっての大きなリスクであると公言し、欧州が米国の属国になることを避け、『戦略的自律性を築く』よう呼びかけました。
マクロン大統領は4月9日に米メディアに対して、「台湾の緊張を高めることが欧州人の利益になるのか、答えはいいえだ。最悪のシナリオは、欧州が台湾で『従者』となり、米国の政治的意図と中国の過剰反応に従うことだ。なぜ、われわれは なぜ他人が選んだリズムに従わなければならないのか」と述べています。
この発言は当時、多くの批判を浴びました。ドイツの外交専門家ノルベルト・レトゲンは、「マクロン大統領の発言は自分自身を孤立させ、ヨーロッパを弱体化させた」と述べ、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長の立場とは逆であることを明らかにしました。
フォン・デア・ライエン委員長は3月末の講演で、「台湾海峡の平和と安定が絶対的に重要であり、どちらかの側からの力による一方的な現状変更には賛成しない」と述べています。
世論調査が発表された6月8日、欧州連合(EU)外務省のグンナー・ウィーガンド・アジア太平洋局長は、EUと米国が台湾海峡について高いレベルの懸念を共有していることを強調しました。
ウィーガンド・アジア太平洋局長は、戦略国際問題研究所(CSIS)のフォーラムで、「EUは独自の明確な「一つの中国」政策をとっており、世界の利益のために現状を維持するためにあらゆる努力を払うべきだ。米国と中国がコミュニケーションチャネルを再構築することが絶対に重要である」と述べています。
これに対し、ホワイトハウスのインド太平洋担当調整官であるカート・キャンベル氏は、同フォーラムで「対話の扉は開いたままだが、競争が米中関係の支配的枠組みであることに変わりはない。米国は、相違が対立に発展したり、新たな冷戦のメッセージを送ることがないよう、『責任ある競争』を確保する」と述べています。
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マクロン大統領の発言は、日本でも批判する有識者は多いのですが、ヨーロッパの一般市民はマクロン大統領と同じ意見を持っている人が多数派のようです。
ヨーロッパ人から見れば、台湾なんて地球の反対側で起きている問題で、自分とは関係ないと思っているんでしょう。
参考記事
<徳国之声>民调:美中若为台爆冲突 6成欧盟人盼中立