中国に対する抑止力を強化するため、米陸軍が中距離ミサイルを発射できる新型発射装置を、年内にアジア太平洋地域に配備する方針であると、チャールズ・フリン米陸軍太平洋地域司令官が在日米大使館で明らかにしました。
米国議会の出資によって設立された短波ラジオ放送局の自由亜州電台の記事より。
フリン司令官は在日米大使館で多くの報道陣を前に、「どのようなシステムなのか、どこに、いつ配備されるのかについては話すつもりはない。」と述べつつ、「この地域(アジア太平洋)が長距離精密攻撃能力を得ることになるとだけ言える。」と述べました。
フリン司令官は発射システムの詳細を明らかにしていないが、米陸軍が開発・配備を進める地上発射型中距離ミサイルシステム「タイフォン」とみられ、射程1600キロ以上とされる巡航ミサイル「トマホーク」や、新型迎撃ミサイル「SM6」などが搭載できます。米陸軍はすでに両ミサイルの発射試験にも成功しています。
ある米政府関係者は、「日本も候補地のひとつではあるが、発射システムはグアムに配備され、訓練目的で日本に短期間輸送される可能性もある。」と述べています。
別の米国防関係者は、「アジア太平洋に新しいミサイル発射装置が配備されれば、ミサイル能力における中国との差が縮まり、抑止力が強化される。」と指摘しました。
米軍が地上発射型中距離ミサイルを新たに配備すれば、1987年に米ロ(当時はソビエト連邦)が中距離核戦力(INF)全廃条約に調印して以来初めてのことになります。
同条約は、米ロが陸上配備型の中距離ミサイルや射程500~5500キロの巡航ミサイルを保有することを禁じていましたが、両国が2019年8月に脱退することで、INF全廃条約は失効しています。
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INF全廃条約は米国とロシアとの条約なので、参加していない中国は、地上発射型の中距離ミサイルを1250発以上保有しているとされ、米国と中国との間で「ミサイルギャップ」が生じていました。
INF全廃条約失効後、米軍は中距離ミサイル開発を進めており、射程2700キロ超の長射程極超音速兵器(LRHW)を23年中に配備する予定でしたが遅れています。
また、米海兵隊は射程1600キロ超の地上発射型トマホークを、26年までに約100発保有する見通しだとのことです。
参考記事
<自由亜州電台>强化对中威慑 美军年底前将在亚太部署新型中程导弹