中国は、中国製電気自動車に関するEUの関税決定を前に、EUに対する貿易報復措置を警告しています。フランス紙ル・モンドによれば、中国の電気自動車はバッテリーの品質が良く、かつ強力な国家支援によって中国はEUの電気自動車市場で主導権を握っています。
フランス国営ラジオ放送局RFIの記事より。
EU諸国はこれに適応するのに苦労しており、 ロジウム・リサーチ・グループは、今年4月30日に発表した調査の中で、EUは中国の電気自動車に15~30%の関税を課すだろうと予測しています。
しかし、中国のEVが現在競争力のある価格になっていることを考えると、中国のEVの優位性をなくすためには、関税を45~55%まで引き上げる必要があると指摘されています。
EUは中国の電気自動車に関税を課す可能性が高いが、まだ決定しているわけではありません。
EUが決定を発表する前に、中国はすでに、EUのワイン産業や航空産業などの国々が中国の対抗措置の対象となる可能性を示唆しています。
では、EUはいつ決断を下すのでしょうか?フランスのル・モンド紙によると、EUは2023年秋に欧州向けに販売される電気自動車に対する中国政府の補助金について調査を開始しており、結論は数週間以内に発表されるとされています。
EUの調査の結果は、中国の電気自動車に高い関税を課すことになりそうです。5月14日にバイデンが中国製電気自動車への輸入関税を4倍に引き上げると発表したことで、すでにアメリカ市場で壁にぶつかっている中国の電気自動車企業にとって、それは悪いニュースとなるでしょう。
中国はEU諸国に強い圧力をかけています。5月18日、中国中央電視台(CCTV)の公式アカウントが微博で、「EUが一連の反補助金調査を開始しているが、中国にはそれに対抗する手段がある。」と警告しました。
CCTVアカウントは、中国の弁護士沈倩氏の言葉を引用し、「EUはワインや乳製品を含む農産品で中国市場に大きく依存している。 航空機などの分野でも、EUは中国市場に依存しているのだ。」と述べました。
ル・モンド紙は、中国自動車技術研究センターの劉斌所長が、2.5リットル以上のエンジンを搭載した自動車に対する輸入関税を一時的に引き上げるよう求めたと報じています。
そのような車に対する中国の関税率は15%で、劉斌所長はこれを25%に引き上げる可能性を示唆しました。これは、特定の国や地域の保護主義的な行動とは根本的に異なるものだとしています。
ル・モンド紙は、中国はEU加盟国の政治的に敏感なトピックをターゲットにする方法を心得ていると伝えています。
「今年1月、中国は蒸留酒の補助金に関する調査を発表し、中国は、フランスが中国の自動車輸入に対して保護措置を取ろうとしている国のひとつだと感じている。」とル・モンド紙は報じています。
そして、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、習近平が5月6、7日にフランスを訪問した際、コニャックブランデーを2本贈りました。
5月6日にパリで行われたフォン・デル・ライエン欧州委員会委員長、マクロン仏大統領との会談で、習近平は中国のいわゆる過剰生産能力に問題はないと述べました。
ル・モンド紙は、中国は自らの計画・立案システムが作り出したと思われる産業過剰生産能力の問題を反省しようとしないと伝えています。
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中国の過剰生産能力問題は、4月に訪中したジャネット・イエレン米財務長官が、中国の何立峰副首相との会談で持ち出したように、欧米では強く問題視されています。
イエレン米財務長官:過剰生産能力は世界に害を与える、 中国:保護貿易主義の言い訳にするな - 黄大仙の blog
米国では8月1日から、EVの制裁関税を現在の4倍の100%、EV用充電池を3倍超の25%、鉄鋼・アルミニウムを3倍超の25%、太陽電池を2倍の50%に引き上げます。さらに2025年1月には汎用半導体を2倍の50%、26年1月にはEVに欠かせない黒鉛や磁石の関税を25%に引き上げます。
米国とEU、中国の鉄鋼とアルミニウムに新たな関税を検討 - 黄大仙の blog
日本は今のところ欧米に追随する動きはありませんが、行き先を失った安価な中国製品が大量に日本に流れ込んできたら、日本は持ち堪えられるのでしょうか?
参考記事
<rfi>中国威胁要对欧盟采取贸易报复措施