米商務省は、事実上の「輸出禁止ブラックリスト」に中国の4つの国立スーパーコンピューターセンターなど7つの企業・団体を追加しました。商務省はいずれも、中国の軍関係者が使うスーパーコンピューターの開発や大量破壊兵器の開発に関与しているとしています。
アメリカに拠点を置く国際メディアの自由亜州電台の報道によりますと、米国商務省は4月8日、中国のスーパーコンピュータ事業者7社を輸出規制のブラックリストに追加しました。
米国のソフトや台湾が設計製造した半導体チップが、中国人民解放軍によって超音速弾道ミサイルの製造に使われ、この兵器は台湾や米空母に向けて使用可能であると報じらています。
今回の件は、中国が民間の技術を軍事戦略に転用していることを、改めて明らかにしたもので、ハイテク部品のサプライチェーンに大きな懸念を生じさせ、更なる規制の必要性を感じさせるものです。
今回ブラックリストに追加された7社は下記の通りです。
天津飛騰情報技術有限公司
上海高性能集積回路設計センター
信維微電子
国家スーパーコンピューターセンター済南
国家スーパーコンピューターセンター深圳
国家スーパーコンピューターセンター無錫
国家スーパーコンピューターセンター鄭州
米商務省は、これらの企業は、中国人民解放軍が使用するスーパーコンピュータの構築に関与していたり、中国の軍事近代化や大量破壊兵器の開発を支援していると説明しています。
米国企業がブラックリストに掲載された企業と取引をしたい場合には、毎回米商務省の許可が必要となりますが、基本的に許可はおりませんので実質的に取引禁止となります。
今回ブラックリストに追加された7社のうち、天津飛騰は特に注目されていました。
天津飛騰は、いわゆる「民間企業」ですが、米国Synopsys社やCadence社からソフトウェア技術を、台湾のTSMC社や世芯電子(アルチップ)社から半導体チップを入手し、人民解放軍の超音速ミサイル製造に協力していると報じられています。
半導体産業はサプライチェーンが複雑で、中国のハイテク産業の大部分は、海外企業からの上流の技術支援によって成り立っています。
天津飛騰は人民解放軍との関係を隠していますが、天津飛騰は2014年に国有企業の出資によって成立し、当時の株主に国家スーパーコンピューターセンター天津が含まれており、人民解放軍の国防技術大学などの公的機関とも強い関係を持っています。
国家スーパーコンピューターセンター天津が製造したスーパーコンピューター天河一号には、天津飛騰のFT-1500プロセッサーが採用されていると言われています。
また、超音速兵器を開発している中国の主要な兵器研究機関である中国航空力学研究開発センター(CARDC)の報告書や論文には、天津飛騰のプロセッサーがテストで使用されたことが繰り返し記載されていることが判明しています。
CARDCも米国の輸出禁止ブラックリストに載っていますが、民間企業である天津飛騰を通じて、海外の重要な技術を入手しているようです。
台湾の王美華経済部長は、「台湾にはハイテク製品の輸出に関する規制があり、TSMC社や世芯電子(アルチップ)社は台湾と米国の法律を遵守しており、チップは軍事利用に関与していないと理解している」と述べています。
TSMC社は、天津飛騰との間で軍事目的には使用しないという契約を結んでおり、天津飛騰はTSMC社に対して、このチップは一般向けのサーバーやパソコンに使用されると伝えていたと述べています。
中国本土での半導体チップのシェア
(中国メディア集計のため、台湾は「中国台湾」と表記)
台湾は、中国本土からの侵攻から身を守るために米国に依存していますが、その経済は中国市場に大きく依存しています。
米中の緊張が高まる中、米国では企業が「中国系台湾企業」と取引することを制限する適切な措置を講じるべきかどうかが議論されています。
日本も台湾以上に、中国からの国土防衛は米軍に依存し、経済は中国に頼り切っています。
中国は軍民融合が当たり前なので、民間技術はすぐに軍事利用され、軍事技術はすぐに民間利用されます。
「中国系日本企業」や「中国だけ頼りの日本企業」が深く考えずに、パーツを中国企業に売ったり、中国で作ったりしたら、米国が制裁を検討する事態になっても不思議はないように思います。
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参考記事
<自由亜州電台>美黑名单新增七家中国实体 中国用美技术、台晶片研发武器
http*://bit.ly/3uBJNDN
<百度新聞>美“黑名单”新增7家中企,关乎台积电和中国芯片产业
http*://bit.ly/3mB6NAj