996(午前9時から午後9時まで、週6日働くこと)は、中国のテクノロジー産業では一般的な労働時間です。しかし従業員の不満が高まるにつれ、努力しても達成感を得られないために、"寝そべり “運動にまで訴えるようになりました。そのような中、当局は 「996 」は違法であると規制せざるを得なくなっています。
米国政府が運営する国際的メディアの美国之音の記事より。
中国の多くの大企業、特に活況を呈しているテクノロジー分野では、労働者がはるかに長い時間働いているにもかかわらず、それに対する報酬が支払われていないケースが多いといいます。
中には燃え尽きてしまい、それがきっかけでここ数ヶ月、若い人たちの間で「寝そべり主義」という概念が流行しています。 働きすぎず、自分のできる範囲で満足すべきだという考え方のことです。
専門家によると、政府は「寝そべり主義」の台頭という危機の勃発を認めることはできず、中国は競争力を維持するために労働者を必要としており、社会的安定も望んでいます。
新華社などの中国の公式メディアは、「横たわって生産性を上げないことは、個人や国家の発展に悪影響を及ぼす」として、「寝そべり主義」ブームを「恥ずかしいこと」と批判しています。
しかし996に対する国民の怒りは、もはや当局が見て見ぬふりをできないところにまで達しています。
香港理工大学の陳慧玲博士は、「この問題はすでに限界点に来ています。特に従業員が死亡するケースが大きく報道されてからは、当局が今すぐ発信することが非常に急務である」と述べています。
有識者によると、中国における労働者の権利を根本的に保護するためには、真に労働者の利益を代表できる労働組合組織を確立しなくてはならないと指摘しています。
「労働組合組織によって、政府関係者と資本家との癒着という既存の政治システムを打破しなければ、「996」という労働システムは、一旦は収束するかもしれないが、すぐに復活するだろう。」
中国人力資源社会保障部と最高人民法院(最高裁判所)が、8月26日に共同で「残業・時間外労働紛争の典型事例」(以下、「典型事例」)を発表し、「996」が深刻な違法行為であることを明らかにしました。
両省はまた、これらの典型的な事例は、今後の関連事例において仲裁機関や人民裁判所を導くための先例として使用されると述べています。
典型事例の発表は、 労働時間と残業代の適用に関する法的基準をさらに明確にし、仲裁機関や人民法院が案件を処理する際の指針を増やし、裁定の規模を統一し、労働者の休息と労働報酬に対する権利を効果的に保護することを目的としています。
典型事例の一つに、従業員が「残業を拒否した」場合に、雇用主が雇用契約を解除できるかどうかの問題があります。
宅配便会社に勤務する張某さんは、試用期間中に残業を拒否したため、雇用主から解雇され、労働争議仲裁委員会に仲裁を申請しました。
中国の労働法の規定では、
『使用者は、生産や操業のために労働時間を延長する必要がある場合には、労働組合および従業員と協議しなければならないが、1日3時間を超えてはならない』
『使用者は、本法の規定に違反して労働者の労働時間を延長してはならない』となっています。
仲裁委員会は、宅配便会社の規則の「週6日、午前9時から午後9時までの労働時間」は、「労働時間延長に関する法律の規定に著しく違反している」と判断しました。
仲裁委員会は、張某さんが「法律に違反した残業」を拒否したことを理由に、雇用主が張某さんとの雇用契約を解除したことを違法とし、補償金として8,000元(約13万6千円)を支払うよう裁定しました。
アリババの創業者であるジャック・マー氏は、2019年4月11日に、従業員に対し、「アリババで996を行うことができるのは、私たち『人間にとって』幸せなことだと思います。 996を欲しがっている多くの企業にはその機会はありません」と述べました。
彼は、「人よりも多くの努力と時間をかけずに、自分の望む成功を手に入れることはできない」とも言っていました。
ジャック・マー氏のような起業家にとって「996」は「成功」の要素として欠かせないものと考えられています。
先のジャック・マー氏の言葉の真意は、『(経営者は従業員に)人よりも多くの努力と時間をかけさせずに、経営者自身の望む成功を手に入れることはできない』と言うことができます。
しかし、中国人力資源社会保障部と最高人民法院が共同で発表した「典型事例」では 996 は重大な違反行為であるとしています。
このような「典型事例」の公表は、当局が996を制限したい、あるいは場合によっては廃止したいと考えていることを示す重要なサインであると考えられています。
ニューヨークにあるChina Labour Watchのエグゼクティブ・ディレクターである李強氏は、「典型事例は、中国の雇用環境と労使関係の改善にプラスの効果をもたらし、996という残業文化を制限するだろう」と述べています。
李強氏によると、中国では何年も前に労働法と労働契約法が制定されましたが、各レベルの仲裁機関や裁判所は、関連する紛争に対処する際、地域の経済発展の必要性に応じて、企業に忖度した判決を下すことが多かったといいます。
例えば浙江省杭州市に拠点を置くアリババの事例では、アリババを杭州に留めたい、現地の仲裁機関や裁判所は、時間外労働に関わる紛争を判断する際に「時間外労働」を認めず、アリババへの賠償金支払いを認めない判決が多くあったと言います。
今年5月に発表された2020年国勢調査の結果では、中国の人口増加率が過去数十年で最も低いことが明らかになりました。
中国政府は、労働力の減少に対処するのに苦労し、経済を維持するために労働者を必要としているので、996が労働環境を悪化させていることを非常に心配しています。
中国政府は競争力を維持するために、労働者を必要としており、労働者のためのより人間的な雇用システムを作ろうとしています。
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参考記事
<美國之音>“996”加班文化或将消失 中国劳工被资方压榨的日子终结了?
http*://bit.ly/3jI9Eaz
<世界新聞網>中国打击「996」 能解决年轻人的「躺平」焦虑吗?
http*://bit.ly/2WPSleK
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