中国国内で広がる貧富の格差は、中国共産党支配の正当性と経済成長を脅かしかねません。習近平国家主席は、中国における「共同富裕」を呼びかけています。
米国政府が運営する国営放送である美国之音の記事より。
来年2022年に3期目の就任を狙う習近平国家主席は、絶対的貧困の撲滅キャンペーン終了を宣言したた後、不平等に目を向け、2035年までに共同富裕を「堅実に推進」し、2050年までに「基本的に達成」することを約束しています。
中国では「共同富裕」という考え方は珍しいものではありません。しかし、テクノロジー産業や塾などの分野での行き過ぎた規制は、世界第2位の経済大国である中国の投資家を不安にさせています。
1950年代に、建国間もない、貧しかった頃に毛沢東が「共同富裕」を提唱し、1980年代に鄧小平は、一部の人や地域が先に豊かになることで、経済成長を加速させ、究極の目標である「共同富裕」を実現することができると述べていました。
中国は、改革開放政策のもと、経済大国になりましたが、その一方で、特に都市部と農村部との間に、社会の安定を脅かすほどの格差が生じました。
今年、習近平は、共同富裕を実現することは、経済的な目標であるだけでなく、党の統治基盤の中心であることを強調し、より大きなコミットメントを表明しました。
習近平は、共同富裕を促進するための政策として、脱税の抑制、テクノロジー分野の従業員の「996(午前9時から午後9時まで、週6日勤務)」という過酷な労働の制限、学校の主要科目における営利目的の家庭教師の禁止、未成年者のテレビゲームのプレイ時間の大幅な制限などを打ち出しました。
共産党幹部は、共同富裕とは「金持ちから奪って貧乏人に与える」ことではないと述べています。
中国共産党の指導者たちは、税制やその他の所得再分配の手段を用いて、中間所得層の割合を増やし、貧困層の所得を増やし、「過剰所得の合理化」と「違法所得の禁止」を行うことを約束しています。
中国政府は、高所得の企業や個人に対して、いわゆる「第三の分配」と呼ばれる慈善活動や寄付を通じて、社会に貢献することを明確に奨励しています。
いくつかのハイテク企業が、大規模な慈善寄付や災害救援活動への支援を発表しました。
8月18日に、 オンラインゲーム大手のテンセントは、500億元(約8500億円)を投じて「共同富裕特別プロジェクト」を開始すると発表しました。
今月2日に、電子商取引大手アリババは、「共同富裕」に呼応し、2025年までに1000億元(約1兆7000億円)を拠出する考えを明らかにしました。
中国政府は、貧富の差を是正するための固定資産税や相続税の導入を検討しています。しかしこのような変革には数年かかると、政策関係者は考えています。
固定資産税については何年も前から議論されており、2011年以降、上海と重慶で試験実施されましたが、ほとんど進展はありませんでした。
中国には「固定資産税」はありません。土地の所有権は国家にあり、取引できるのは「70年間の使用権」のみであるからです。
習近平政権は、共同富裕によって貧富の格差を縮め、中間所得層を増やそうとしています。中間所得層を増やすことで内需を増やすのが目的です。
米国との緊張関係を背景に、経済成長を輸出だけに頼るのではなく、内需と輸出の「双循環」で経済成長を進めようとする、習近平の経済発展戦略の一環として共同富裕が進められています。
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参考記事
<美國之音>习近平“共同富裕”的动力和动机
http*://bit.ly/3gZOW4g