オランダ政府は、半導体製造装置メーカーのASMLが最先端半導体製造装置を中国に輸出するのを規制するため、米国からの規制強化の要請を受け入れる見通しであることが分かりました。 しかし、オランダ政府とASMLが悩んでいるのは、そうすることでASMLの収益が大きく損なわれてしまうということです。
米国国営国際放送の美國之音の記事より。
安全保障問題に関する米国とオランダの協議に詳しいオランダ政府筋は、オランダ政府は米国が提案する制限を完全には受け入れないが、少なくともその一部を受け入れるだろうと述べました。
ASMLは、世界のリソグラフィ装置の60%以上のシェアを持つ世界最重要メーカーであり、7ナノメートル以下のチップに必要なEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置を供給できる世界で唯一のメーカーでもあります。
中国はASMLにとっても重要な市場であり、売上の約15%を中国が占めています。 ASMLの中国向け輸出は、主に7ナノメートル以上のDUV露光機の生産が中心です。
米中関係の悪化に伴い、バイデン政権はオランダを含む世界の半導体サプライチェーンに関わる全ての関連国への圧力を強めており、中国のこの分野での成長を抑制するため、最先端半導体の輸出規制を強化するよう求めています。
昨年10月には、米国政府は米国企業が中国に半導体製造装置を販売することを禁止する命令を出しました。 米国当局は、オランダが米国に追随し、中国による最先端半導体の製造装置獲得を阻止することを望むと述べています。
中国は、こうした米国のやり方を自由貿易に対する攻撃と批判し、その旨をWTOに提訴しています。
1月17日にバイデン大統領と会談したオランダのマルク・ルッテ首相は、半導体装置に関するバイデン大統領との話し合いが「良い結果をもたらした」と考えていると述べています。
しかし、オランダのリースュ・スフライネマッハー対外貿易・開発協力大臣は、先日のダボス会議で、オランダは米国の規制を急いで受け入れることはないだろうと発言しました。 彼女は、「国際的な圧力があることは承知しているが、私は開放的な貿易のために働き、保護主義に反対する 」と述べました。
オランダ政府筋によると、政府内で関連問題の解決に向けた努力が続けられているとのことです。
課題の一つは、オランダが提案したASMLへの規制が、米国企業に対する規制より厳しくならないようにすることです。
もう一つの課題は、規制が、ASMLの日本のライバルであるニコンにも同様に適用されることです。
そして第三の課題は、今回の規制によって世界の半導体市場が混乱しないかどうかです。
半導体業界は、新型コロナ流行時の品不足を脱し、特に半導体生産の下層で中国の生産能力を必要としています。
もしオランダ政府が米国の提案する中国への輸出規制を受け入れた場合、ASMLの収益の5%が失われる可能性があると言われており、これに中国向けDUV露光装置の輸出規制が加われば、ASMLはさらに大きな損失を被ることになります。
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安全保障上の問題から輸出規制をすることはWTOでも認められたことですが、実際に損失を被る企業には損失補填するのは当然だと思います。
日本も米国政府の要請(指示)に従うと思いますが、しっかりと損失補填をして欲しいですね。損失補填するから増税だと言い出しかねませんが。
参考記事
<美國之音>是否向中国出售光刻机令荷兰纠结,内线:出口限制会增加