12月10日は世界人権デーでした。この一年、中国本土と香港の人権状況が国際社会から大きな注目を集めています。 在中国米国大使館は今年の世界人権デーに、中国の人々に「大胆に人権を訴えよう」と高らかにアピールしました。
世界人権デーの前日の12月9日に、在中国米国大使館の微博(中国版Twitter)アカウントに、オンラインセミナーの告知が掲載され、中国国民に参加を呼びかけました。
世界人権デーの12月10日午後8時から開かれたセミナーの告知には、「大胆说 站出来(大胆に語れ 立ち上がれ)」のスローガンとともに、香港民主化デモの様子が映し出されています。
デモ隊が片手が5本の指を立て、反対の手が人差し指だけを立てているのは、民主化デモのスローガン「五大诉求,缺一不可(5つの要求 一つも欠けさせない」を意味しています。
香港市民の「五大诉求(5つの要求)」とは、
1. 逃亡犯条例改正案の完全撤回
2. 市民の抗議活動を「暴動」とみなす見解の撤回
3. デモ参加者の逮捕及び起訴の中止
4. 警察の過度な暴力制圧の責任追及、及び独立調査委員会設立と警察調査実施
5. 普通選挙実現
でした。
結局実現したのは「1. 逃亡犯条例改正案の完全撤回」だけで、それ以外は成立することなく、今年7月の香港国家安全維持法の施行によって、香港は中国共産党によって完全に制圧されました。
セミナーの様子を伝えるニュースを見つけられなかったので、どれくらいの参加者があったのか不明ですが、中国本土からの参加者は少なかったのではないかと推測しています。
中国国内ではネットは監視されていますし、参加したことで後々逮捕勾留されたり、社会的に不利な扱いを受けることは避けたいだろうなと思うからです。
さて、米国大使館による「人権」セミナーの告知には、中国共産党も敏感に反応し、機関紙人民日報の系列紙の環球時報に批判記事を掲載しました。
記事では、今年の世界人権デーを迎えるにあたり、一番破綻している国は、間違いなくアメリカであるとしています。
環球時報はその理由として、新型コロナの流行が制御不能に陥っており、1日あたりの死者数は911テロの犠牲者2977名を上回り、「アメリカの政党政治は、新型コロナ疫病の制御を放棄し、人命に関わる巨大な人道的悲劇をもたらした。」と述べ、これが重大な人権無視だと断定しています。
このような状況で、米国は自国の人権無視への言及を避けて、中国国民に「大胆说 站出来(大胆に語れ 立ち上がれ)」と呼びかけるなど笑止千万。中国ネット民から容赦なく嘲笑している、と論評しています。
環球時報の記事では、アメリカが落日を迎えたことを実感したからだと分析しています。
かつてアメリカ社会は「一つの富が百の醜さを隠す」のが当たり前で、貧しさは他国と比較して大したことはなかったのに、貧富の差が拡大して、国際社会でのアメリカの経済主導力が低下し、国の自信が蝕まれ人権をめぐる優越感が失われるに連れて、アメリカの態度はより傲慢に、よりマニアックに変化している、と環球時報は分析しています。
この分析はこじつけ感が否めないのですが、要はアメリカは経済的に落ち目になり中国の経済発展に脅威を抱いているので、人権を持ち出して中国を叩こうとしている、という従来の主張を表現を変えただけです。
セミナーの告知に「中国ネット民から容赦なく嘲笑している」と論評していますが、言葉通りに受け取るのは早計です。これは中国共産党が国民に対して「容赦なく嘲笑しろ」と命じていると受け取るべきです。
環球時報は次の言葉で記事を締め括っています。
『中国は進歩的な社会として、人権にはまだまだ改善の余地があるという意識を持っており、この世界人権デーにはその意識の重要性を強調すべきである。中国では「人権」という言葉の呼びかけが今後も盛んになることを願っており、この目標を胸に秘めながら、外界との関わりを拒まず、刺激を受けながら、自分自身を追い込んでいく必要がある。』
この言葉通りに中国共産党が歩んでくれることを願いながら、しっかりと監視していく必要もありそうですね。『約束はしたけど、守るとは言ってない』と言い返す人たちが相手です。
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参考記事 *>s
<環球網>社评:国际人权日,今年最该面壁的是华盛顿
http*://bit.ly/342QrrZ