米国のブリンケン国務長官は7月14日、ASEAN加盟国の外務大臣とのビデオ会議で、中国の南シナ海における海洋権益の主張は違法であり、米国は、中国から圧迫を受ける東南アジア諸国とともに立ち向かうと述べました。
ビデオ会議は、ブリンケン国務長官が就任後初めてASEAN10カ国の外相と会談したもので、南シナ海をめぐる見解を示したのは11日に続き今週2回目となります。
11日にブリンケン国務長官は、現米政権が、南シナ海に関するトランプ前政権の立場を継続し、南シナ海の大部分に対する中国の主権主張は正当なものではないと判断すると米国民に表明していました。
ブリンケン国務長官は12日にはツイッターに、「5年前の今日、フィリピンは南シナ海における法の支配のために大きな勝利を収めた。米国は同盟国やパートナーが海洋権益を守り、海における航行の自由を支援することを支援する」とツイートしました。
2016年7月12日に、オランダ·ハーグにある国連常設仲裁裁判所は、南シナ海における中国の主権主張「九段線」が、国連海洋法条約(UNCLOS)違反であり無効であるとする最終判決を下しました。
国連海洋法条約によれば、中国とフィリピンの両国はこの判決に法的に拘束されるはずですが、 仲裁裁判所には判決に対する強制権がなく、 当時国が裁決を守らなくても何もできません。
中国は「こんな採決はただの紙切れだ」と主張して判決に従うつもりが全く無く、 勝訴しているフィリピンも、投資や経済的援助を受けるために親中政策をとっていたため、抗議活動もあまり力の入ったものではありませんでした。
ところが、2020年から米軍の航行の自由作戦の頻度が増え、7月には3隻の米空母が南シナ海に集結して中国に圧力をかけ始めると、フィリピンは中国に対して採決遵守を迫り、南シナ海問題は米中の大きな争点になっています。
バイデン政権も南シナ海に対するトランプ前政権の政策を引き継いでおり、ブリンケン米国務長官と米国務省はここ数日、中国側と非難合戦を繰り返しています。
中国外交部の趙立堅報道官は、7月12日と14日の記者会見で、「中国は米国側の誤った発言や行動に断固として反対する」と繰り返し述べ、「米国は南シナ海の歴史と事実を無視し、国際法を歪曲し、南シナ海の領土主権と海洋権益をめぐる紛争を意図的に誘発し、地域の平和と安定を損なっている」と非難しています。
口先の非難合戦だけでなく、米国と中国とは最近、南シナ海の海域で活発に軍事活動を行なっています。
7月6日に沿海域戦闘艦USSチャールストンがマラッカ海峡を経由して南シナ海に入り、沿海域戦闘艦USSタルサがフィリピン海からフォデ島の水路を経由して南シナ海に入りました。
7月12日には、ミサイル駆逐艦ベンフォードが西沙諸島の海域に入り、 中国側は直ちに声明を出し、米軍艦が「中国の領海」に侵入したため、中国の海空軍が警告したと発表しました。
これに対して 米海軍第7艦隊は、米軍は国際法に基づいて航行の自由を確保するために行動しており、中国、台湾、ベトナムが課している無害な航路に対する違法な制限や、西沙諸島周辺海域に対する中国の主張に異議を唱えていると回答しました。
一方、南シナ海における中国の軍事行動はエスカレートしており、中国軍は5月と6月に南シナ海の紛争地であるミスチーフ環礁に軍用機早期警戒管制機KJ500を、6月と7月には紛争地であるスービ礁に軍用輸送機「運9」と直-8ヘリコプターを着陸させました。
ミスチーフ環礁とスービ礁はすでに、さまざまな戦闘機や爆撃機やほとんどの中国の軍艦を受け入れる設備があると米軍は指摘しています。
東南アジア(ASEAN)諸国は、米国が南シナ海や東南アジアの問題に積極的に関与することを歓迎しています。
14日に開催されたUS-ASEAN外相会議(ビデオ会議)で、マレーシアのヒシャムディン外相は、多国間の協力が地域の安定、平和、繁栄、安全を確保する唯一の方法であると述べました。
また、南シナ海の仲裁の当事者であるフィリピンは、この仲裁の正当性を主張しています。
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参考記事
<自由亜州電台>不宁静的南中国海 美中海上、舆论场针锋相对
http*://bit.ly/3yYrBq5
http*://bit.ly/3ib9Hty
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